水谷、美誠らが語る中国卓球の強さ 最強ライバルを攻略する方法はあるか?

スポーツナビ
 6月15日から行われていた卓球のジャパンオープン(OP)で、日本勢は最終日を待たず、準々決勝までに全員姿を消した。リオデジャネイロ五輪に出場する代表選手は水谷準(ビーコン・ラボ)のベスト8が最高成績で、石川佳純(全農)、伊藤美誠(スターツ)、吉村真晴(名古屋ダイハツ)が2回戦で、福原愛(ANA)と丹羽孝希(明治大)が初戦敗退を喫した。

日本勢は最終日を待たず全員敗退。伊藤(写真)も2回戦で姿を消した 【写真は共同】

 日本勢が五輪に向けてやや不安を残した一方で、相変わらずの強さを見せつけたのが中国勢だ。男子は世界ランキングで1位から4位を占める“ビッグ4”が、女子も世界ランキング1〜3位の3人がシングルスの準決勝に残った。ここ最近の五輪や世界選手権でも常に金メダルを独占しており、死角は見当たらない。

 日本が悲願とする表彰台の中央に立つためには、この高くそびえる壁を越える必要がある。果たしてそれは実現可能なミッションなのか。ジャパンOPで実際に中国選手と対戦した日本勢の声をもとに、その強さと攻略方法を探る。

回転量と印象深いプレーの多さ

「中国選手に共通する強さは、ボールの回転量ですね。サーブを打たれたときに、その回転量に焦らないで処理することが重要です」

 男子のエースである水谷はこう話す。3球目攻撃(自分のサーブ、相手のレシーブのあとに返ってくるボールを攻撃すること)など自分に優位な展開で試合を進めていくためには、回転量の多いサーブで相手のレシーブを崩す必要がある。こうしたサーブが中国選手は非常にうまい。これで相手を崩し、威力あるフォアハンドでポイントを取りにくる。

現世界王者の馬龍(右から2人目)と対戦した水谷は「プレッシャーに負けた」と悔しがった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 水谷はジャパンOPの準々決勝で、現世界王者でランキング1位の馬龍と対戦。この試合前まで過去11戦全敗という天敵相手に、水谷は前陣で自ら攻撃を仕掛けていく戦略で挑んだ。中国選手相手には先手を奪うことで有利な状況を作る以外、勝つ方法がないからだ。しかし、結果は1ゲームも取れず0−4で完敗。水谷は序盤に積極性を失っていたことを悔やんだ。

「中国選手との対戦ということで、自分がプレッシャーに負けていました。普段ならサーブはあまり深く考えないんですけど、打たれたらどうしようとか悪いイメージがあって……。途中にフォアで打ち抜かれてしまう場面があって、それがどうしても頭に残ってしまい、うまく決断ができませんでした」

 男子日本代表の倉嶋洋介監督は、中国選手の巧さをこう指摘する。

「馬龍はフォアがすごく強い一方で、バックハンドはそこまで強くない。でもそれを強く見せる。フォアに行くと見せかけ、バックを攻めて少しでも遅く返ってくるボールに水谷が仕掛けるという展開に持っていきたかったんですけど、うまくいかなったですね。中国選手は、例えば9−9で競っているときなんかに、すごいボールを決めてきたり、印象深いプレーが多い。そうされるとまたどこかでそうしたボールが来るんじゃないかと、選手にはプレッシャーがかかるんです」

 中国選手は実際に強いのだが、自分たちをさらに強く見せる術を身につけている。そうすることで相手を心理的に追い込んでいくのだ。実際に、中国選手と対戦するというだけで必要以上に恐れてしまうことが、勝利を遠ざけている1つの要因にもなっている。

 ダブルスで馬龍、許シン(世界ランキング3位)組と対戦し、1−3で敗れた丹羽は「威圧感というかオーラがすごくあって、構えられるだけで硬くなってしまう。チャンスボールなのにそう見えなくてミスしてしまったり、何回戦っても慣れない。本当に独特な雰囲気がある」と語る。コンビを組む吉村も、「決定力や安定性が非常に高いので、そういう怖さがすごくある。基本技術が圧倒的に高いので、凡ミスは絶対できないというプレッシャーは常にかかる」と同調した。水谷とともに、リオ五輪に出場する丹羽と吉村も中国選手に畏怖の念を抱いている。

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