CLはレアル・マドリーのための大会? 抽選にも恵まれ、最多11回目の欧州制覇
CL決勝で得意の展開に持ち込めなかったアトレティコ
シメオネ(中央奥)の采配は的確だったが…… 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】
アトレティコ・マドリーは技術的に劣るライバルとの対戦や、リードを得てからカウンター狙いの展開に持ち込む戦いを得意としている。そのような状況下では相手のミスを誘発し、スペースを突いた攻撃を仕掛けやすいからだ。だが、ライバルがミスを犯してくれない、もしくは相手が自分たちよりボールの扱いに優れた選手を擁している場合は、組織力に頼った専守防衛のフットボールには限界が生じるものだ。
ミラノで行われたCL決勝では、アトレティコ・マドリーは自分たちが得意とする試合展開に持ち込むことができなかった。C・ロナウドを筆頭に攻撃面で輝かしいプレーを見せることはなかったものの、レアル・マドリーは前半を通して確実にボールを支配することで、前半15分にセルヒオ・ラモスのゴールで得たリードを維持し続けたからだ。
それでもアトレティコ・マドリーは後半開始からシステムを4−4−2から4−3−3に変更し攻勢を強め、アントワーヌ・グリースマンが決め損ねたPKの他にも、ケイロル・ナバスの守る相手ゴールに近づくようになった。一方のレアル・マドリーは相手の猛攻を受け後退を強いられ、前線に残したBBCがスペースを生かして仕掛けるカウンターに懸ける他なくなった。
監督として初めてトップレベルのチームを率い、それもタイトルのかかった初のファイナルを指揮したジダンは、落ち着き払った様子を保ちながらも、選手交代の決断においてミスを犯した。ダニエル・カルバハルの負傷退場によってダニーロの投入を強いられたにもかかわらず、早い段階で交代枠を全て使いきってしまったのだ。しかもアトレティコ・マドリーの守護神ヤン・オブラクと並んで最も重要な役割を果たしていたクロースを後半半ばに下げ、イスコを投入したことでボールとゲームの主導権を握ることができなくなってしまった。
シメオネは的確な采配を振るうも……
レアル・マドリーのエース、C・ロナウドがPKを決めて勝負を決定付けた 【写真:ロイター/アフロ】
迎えた延長戦では両者の立場が逆転するものと思われた。追いついたアトレティコ・マドリーは精神的に優位に立っていただけでなく、まだ2つの交代枠を残していた。一方、すでに交代枠を使い切っていたレアル・マドリーは、その後ベイルとルカ・モドリッチをはじめ複数の選手にトラブルが生じはじめた。
だが、満身創痍(そうい)のレアル・マドリーを前にしても、アトレティコ・マドリーがリスクを冒し攻撃に重きを置くことはなかった。そして決着がPK戦に委ねられた結果、今大会を通して幸運に恵まれてきたレアル・マドリーが“ウンデシマ”(11冠目の意)を手にすることになった。それも、エースのC・ロナウドが勝負を決定付けるPKを決めるという演出付きで。
バルセロナが黄金期を謳歌(おうか)している現状を考えれば、3年間で2度のCL優勝を成し遂げたことはレアル・マドリーにとって悪くない成績である。今季が歩んできた道のりを考慮すれば、その価値はなおさら高まるはずだ。
やはりCLはレアル・マドリーのために作られたコンペティションのように思えてならない。決勝の舞台ミラノは、その新たな目撃者となった。
(翻訳:工藤拓)