安定感が際立ったバルセロナのリーガ制覇 8年で6度、飽きることなく勝ち続ける

輝きはないが、非常に手堅いチーム

今季も前線の南米トリオが効率よくゴールを決め、手堅く勝利をつかんだ 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 結局3位でシーズンを終えたものの、バルセロナを追走し続けたアトレティコ・マドリーの健闘は称賛すべきものだった。一方、長らく3位に甘んじていたレアル・マドリーは結果的に最終節まで優勝の可能性を残したものの、ピッチ上では不安定なプレーを繰り返した。シーズン半ばでジネディーヌ・ジダンに監督が代わったことに加え、カゼミーロをアンカー、トニ・クロースをインサイドMFに移す修正などを行っていたこともその一因だ。

 今季のバルセロナは輝きには欠けたものの、非常に手堅いチームだった。ディフェンスラインは安定し、中盤は3トップへの配球とサポートに徹し、前線の南米トリオが驚くべき効率性の高さでチャンスをゴールに変える役割を果たした。

 ジョセップ・グアルディオラとティト・ビラノバの時代はシャビ・エルナンデスやセルヒオ・ブスケッツ、イニエスタら中盤の選手が中心を担っていた。だがこの2シーズン、バルセロナがメッシとルイス・スアレス、ネイマールが形成するトリデンテを中心に回っていたことは疑いのない事実だ。

 グアルディオラとビラノバが率いた2008年から12年の間、バルセロナが最も重視したのは横パスやバックパスを多用したボールポゼッション、そしてハイプレスによる素早いボールの回収だった。だが今のチームが最も重視しているのは、前線に構える3人の“マタドール(闘牛士)”たちが獲物を仕留めるためのスペースを作りだすことだ。

国王杯決勝に勝てば、2季連続の二冠獲得

2季連続の二冠獲得を目指すバルセロナはどこまで勝ち続けるのか 【写真:ロイター/アフロ】

 今季の成功をもたらした欠かせない要素の1つは、イニエスタのプレーレベルが昨季に比べて格段に向上したことだろう。またメッシがサミュエル・エトー以降、初めて自分以外のストライカーの存在を認め、ゴールをアシストすべくプレーするようになったことも大きい。結果としてスアレスは、あらゆる状況から容赦なくゴールネットを揺らすことができる世界最高のストライカーへと進化を遂げた。

 今も天才メッシはまるで魔法のランプを擦るかのように信じられないプレーを見せてくれる。だがその反面、今季は無理せず運動量をセーブしている印象が強く、試合から消えてしまうことも多かった。それだけに、40ゴールを量産して得点王に輝いたスアレスの活躍はリーガの連覇に欠かせないものだった。

 今季のバルセロナは選手層が薄く、少数精鋭で戦い続けてきたことも特徴だった。1月から登録可能となったアルダ・トゥランとアレイクス・ビダルの獲得は今のところ正解だったとは言えず、トーマス・フェルメーレンも継続的にプレーすることができなかった。またラフィーニャも長期離脱を強いられたことで、攻撃陣の代役を担える選手がいなかった。

 それでもバルセロナは優勝するに相応しいチームだった。3冠を獲得した昨季ほど突出したシーズンとはならなかったが、現地時間5月22日にビセンテ・カルデロンで行われる国王杯決勝でセビージャを破れば2季連続の2冠を獲得することができる。

 勝つことに慣れ、それでも飽きることなく勝ち続ける。そうやってバルセロナは、この8シーズンのうちに6度目のリーグ制覇を成し遂げてきた。いつかきっと、多くの人々がこの時代を懐かしむ日が来ることだろう。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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