再び歩き始めたザンクト・パウリの宮市亮 感謝の気持ちと、頑張る姿勢を忘れずに

中田徹

リハビリ中の試合観戦で感じたこと

リハビリをしながらゴール裏で試合を見続けた宮市は、チームメートからプロとしての姿勢を学んだ 【Bongarts/Getty Images】

「サッカー、できるのかな?」という宮市の言葉を聞き、ふとトゥエンテ時代の彼が「サッカー、やめたいな」と思いつめていたことを思い出した。そのきっかけとなったのが2014年11月のヘーレンフェーン戦だ。

「前半にミスってしまって、顔を下げてしまった。プロとしてやってはいけない行為を、僕はしてしまった。そういう姿を見せるということは、来てくれているお客さんに失礼な行為だったと反省しています。二度とこういうことがないようにしたい。プロ選手として、ミスをしても顔を上げ続け、トライし続ける姿勢というのが大事。その点では、プロとしての姿勢が全然なかったと思う」(ヘーレンフェーン戦後の宮市)

“あの”ヘーレンフェーン戦は、今でも宮市の心の重石になっている。そんな彼がザンクト・パウリに移り、リハビリをしながらゴール裏で試合を見続けてきたことは、サポーターの視点から自分のプレーを見直す機会になった。

「『自分の良さを常に出していこうという姿勢がファンにも響くんだな』というのをゴール裏から観ていて感じました。ちょっと弱気になってプレーした選手は目につく。それこそ去年のヘーレンフェーン戦の自分なんかは、スタンドにいる観客から見ても弱気な姿勢だったと思うんです。そういう姿勢は良い写り方はしないと、外から見ていて本当に思いました」

――ゴール裏から見ていて、弱気な味方がいると、ヘーレンフェーン戦のときの自分を思い出したんだ?

「思い出しましたし、サポーターの反応もやっぱり『何でここ、行かないんだよ!』という感じですよね」

――今日のファブリスジョン・ピクルトは1点取ってから、自分の良さをどんどん出していった。ああいう姿をファンは……

「求めていると思います。ともかく頑張る姿勢。ここのサポーターは負けていても本当に応援してくれるし、頑張る姿勢を見せていかないといけないと思いました」

宮市「来シーズンにつなげられるように」

 ここ3試合、宮市は、典型的な「0−0ゲーム」となったウニオン・ベルリン戦、3−4の大乱戦となったフライブルク戦、2−0で完勝したボーフム戦とさまざまな展開の試合で途中出場を果たしている。しかし、今の宮市のアクションを見る限り、まだ“スーパーサブ”と呼べるものではない。エワルト・リーネン監督の起用法からは、とにかく宮市を試合に出して、実戦を積ませながらコンディションを上げていくんだという意図が伝わってくる。

「本当に監督は分かってくれている。これは本当に大きなけがで、再発するかもしれない。今シーズンは難しいだろうという判断もあるし、来シーズン頑張って欲しいというところもあると思うんです。ようやくスタートラインに立ったかなと思うので、またこれからですね。今シーズンはもう(残り)4試合しかないですし、ここでフィットできるとは思ってないので来シーズンにしっかりつなげられるように頑張りたいです」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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