V2狙う敦賀気比の大物右腕にスイッチオン 東北王者・青森山田を4安打完封の要因

楊順行

最弱のチームから北信越王者に

唯一の得点は3回の主将・林中の持ち味でもある逆方向へのタイムリーから挙げたもの 【写真は共同】

 史上3校目の春連覇がかかる敦賀気比高。甲子園に出場した昨夏、新チームのスタートは遅れ気味だった。しかも、レギュラーで残ったのは林中勇輝一人で、「監督になって最弱。どうなるかと思った」(東監督)ほど、手応えがなかった。だが、実戦経験を積むうちに研磨され、勝負強さを発揮していく。スキのない戦いぶりで北信越を制したとき、主将の林中は、「前のチームより、打線のつながりはあると思う」と成長を実感していた。

 確かに、攻守ともにレベルは高い。過去3年の甲子園で14勝を記録しているように、実績も十分だ。ただ、自チームを含め、秋の地区王者4校がひしめくゾーン。そのうちの1校・青森山田高とは神宮大会の再戦で、そのときは8対5で勝っている。ただ東監督は「優勝したチームとは全然違いますから、挑戦者の気持ちで戦います」と冷静だった。

逆方向への打撃で唯一の得点

 両軍合わせての唯一の得点は3回だ。2死から植村元紀がヒットで出ると、本間太一が粘って四球でつなぐ。続く三番・林中は、フルカウントから真っ直ぐを狙いすましてライト前に運んだ。昨年は甲子園でレフトに一発放っている林中だが、「逆方向が自分のバッティングです」というように、右方向に打つのがめっぽううまい。

 青森山田高・兜森崇朗監督によると、「もちろん、林中君を警戒はしていたんですが、(走者が自動的にスタートを切る)フルカウントになったのが試合の流れ、勝負の分かれ目でしたね。ウチの堀岡も冬場、球威と制球が上がり、3安打といい投球をしてくれましたが、山崎君の真っすぐは、球速もそうですが角度があり、内野ゴロを打たされてしまいました」。

終盤にも気を抜かず140キロを計測

 その山崎、大会前の不調から立ち直ったのも平沼と一緒なら、「応援してくれているアルプスに一番近いから」と、挨拶の整列では最後尾にいるのも平沼と同じ。となると……優勝、つまり連覇も見えてくるということか。

「フィールディングとか、平沼さんには全然かないません。バッティングも、いまだに公式戦ノーヒットですし……(笑)。優勝を目指す、というより、次の相手としっかり戦うことを意識したいと思います」

 青森山田高戦では、終盤にも球速は140キロ台をマークした。
「昨年の神宮大会では、5点差で勝利の見えてきた8、9回にノックアウトされました。ホンマに悔しくて、自然に涙が出たんです。だから、終盤にも気を抜かずにしっかり投げられた」

 もともと「投手としての将来性は平沼より上」というのが東監督の評価。さあ、大物右腕にスイッチが入った。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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