“松坂二世”高田萌生が誓う本家超え 強打の東海大甲府打線も脱帽の投球を披露

楊順行

「松坂さんは意識しています」

初戦を勝利した高田の究極の目標は「センバツ最速の153キロ超え」とのこと 【写真は共同】

 松坂大輔の横浜高が春夏連覇した1998年生まれ。ソフトボールをやっていた小学生時代、当時メジャー1年目の松坂の投球に目を見張った。「どうやったら、あんなに速く投げられるんだろう」。明徳義塾中に進むと、松坂の映像を繰り返し見て、フォームをまねた。地元から甲子園に出たいと、創志学園高に進み、いつしか“松坂二世”と呼ばれるようになり、最速は150キロに達した。なるほど、振りかぶる両腕の位置、高さ、そしてフィニッシュのあと……確かに、本家を思わせる。

「松坂さんのことは意識しています。甲子園で歴史をつくった投手ですから。いらないところでヒットを打たれたり、実力的には及ばないけど、甲子園で実績を作って、最終的には超えることが目標です。154キロを出したい。究極の目標ですね」
 大阪桐蔭高・藤浪晋太郎(現阪神)らが記録したセンバツ最速153キロ超えを、威勢よく視野に入れている。強気そうな表情は、絵に描いたようなピッチャータイプと見た。

疲労骨折も気づかないほどの走り込み

 スピードの源泉は、徹底した走り込みにある。もともと50メートルを5秒9というずば抜けた脚力を持つが、昨年は毎日10キロを走り、冬場は瞬発力強化に重点を置いてショートダッシュを1日50本。昨年12月、社会人との合同練習では、400メートルのインターバル走10本を、すべてトップでゴールした。もっとも、疲労骨折していたのに気がつかないほど走り込んだというのは今は笑い話だ。さらに冬場は、食トレによって体重が5キロほどアップ。

「秋まではイチ、ニ、サンの反動だけで投げていたのが、いまはイチ、ニ〜のサンとタメができるようになりました。ボールへの力の伝わり方が変わってきた感じで、その分、球威が増したと思う」

本番の別人ぶりに主将の心配も杞憂に

 ただ、大会前は調子が上がらなかった。「1番・ショート」の切り込み隊長・北川大貴が言うには、「練習試合で、せっかく打線が大量点を取っても、大量失点したりでピリッとしない。しっかりしろ、と言いたかったんですが、厳しく指摘するとキレるので(笑)」。

 こう、言いたかったのだろう。昨夏の岡山県大会決勝。現メンバーのうち高田と北川だけが試合に出たが、岡山学芸館高に惜敗した。ベンチ前で泣きじゃくり、「俺らが引っ張って甲子園に行こう」と2人で誓ったはずだ。せっかくそれが実現したんだから、もっとピリッとしてくれよ……。

 それが、いざ本番になると別人に変身するのが、エースということだ。変身の理由は?と問うと、長澤監督は「大会前は、ちょっと肩に張りがあったのが不調の要因。きのうのマッサージが効いたんでしょうか(笑)」。うまく、はぐらかされた。

 次戦の相手は、神宮大会優勝の高松商高である。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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