目標が明確なマクラーレン・ホンダ、シーズン序盤で勢いに乗れるか!?

田口浩次

テストで見えたトップとの差

2月末に行われたテストでは走行距離を重ね、さまざまなデータを取得した 【Getty Images】

 全体のトップはフェラーリのキミ・ライコネンが記録した1分22秒765。一方のマクラーレンは14番手でジェンソン・バトンが記録した1分24秒714。その差は1秒949だ。しかし、3番手のタイムを記録したメルセデスのニコ・ロズベルグは1分23秒022というタイムをフェラーリやマクラーレンなどより硬いタイヤでたたき出した(ロズベルグはソフトタイヤ、フェラーリやマクラーレンはウルトラソフトを使用)。

 もしフェラーリやマクラーレンと同じタイヤを使用していれば、もう1秒ほど速いタイムを刻んだのではないかと考えられる。というのも、メルセデスは15年シーズンの開幕前テストで1分22秒792というタイムを出していて、他のマシンがみな昨年より良いタイムを今年のテストで記録しているなか、メルセデスだけが昨年より遅いタイムを出していることはあまりにも不自然だ。彼らの本来のポテンシャルは1分23秒022より、確実に1秒以上速いと考える方が自然だろう。そうなると、マクラーレンとの差は少なくとも3秒近いことになる。

 実力差がまだあることは、ホンダのF1プロジェクト総責任者となった長谷川祐介氏もインタビュー等で認めている。「もっとパワーが必要だし、チームとして6番手程度ではないか」と。つまり、ギリギリ予選Q3進出を争うレベルということだ。

 こう書いてしまうと、まだまだ悲観的に見えるが、フェルナンド・アロンソとバトンという元王者のコンビからは、開幕を直前に控え、前向きなコメントが出ている。バトンは「自分たちの現状の順位がどこにあるのか、それを確認することを楽しみにしている」と語っている。ちなみに、15年の開幕前は「僕たちがどの順位にいるのかわからないが、いまは忍耐が必要だ」と言っていた。シーズン開幕への意気込みがまったく違うのがわかるだろう。

昨年とは大きく変わったチームの雰囲気

 チームの人事体制が一新され、ドライバーもやる気になっている。「病は気から」という古来からのことわざがあるが、まさに昨年のマクラーレン・ホンダはチームスタッフ誰一人、前向きな気持ちでシーズンを戦っていたとは思えない。もちろん、彼らは常に全力を尽くしたが、心のどこかに焦燥感があったことは否めないだろう。

 それは日本グランプリで、音声がモニターされていることを知っているはずのアロンソが「GP2だ、GP2のエンジンだ!」と叫んだことからも、いかにストレスが溜まっていたかがわかる。それと比較したら、「今年は勝利こそ難しいが、去年とは状況はまるで違う」とアロンソもインタビューに答えており、チームが現実的な目標としてトップを追いかける気持ちになっていることは明らかだ。

 まずは予選Q3進出。これをいかに早い段階でクリアするかが、今後のマクラーレン・ホンダの上昇カーブの予測につながるだろう。というのも、どんなに信頼性が高いマシンであっても、遅ければ勝利には一歩も近づけない。逆に多少壊れることがあっても、速いマシンならば信頼性を確保する方法は見つけることができる。

 ホンダの長谷川氏も「まずはパワー」と語っており、目指す目標はハッキリしている。シーズン序盤こそ、いきなりトップチームに近づくことは難しいだろうが、大事なのは、毎戦進化していること、相手との差が縮まっていることを認識できるかだ。ファンとしても、そうした上昇カーブを描けるかを見極めることが、今年のマクラーレン・ホンダの応援ポイントになるはずだ。

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