東京のメダル候補が手にしたい2つのこと 十種競技ホープが海外武者修行を語る

構成:スポーツナビ

“米国流”は短時間で濃い練習

 練習の開始時間が日によって異なるのでその時間によって1日の流れは変わります。基本的には7時半に起床し、ウエストモント大学で午前練。トレーニング時間は1時間半〜2時間と比較的短いです。昼食後はトレーニングのレポートの作成、自主トレーニングを行い、夕食後にはストレッチや修士論文を執筆し、23時30分には就寝します。

 競技場へ行くと、ほとんどの人が「How are you?(元気?)」「How's it going?(調子はどう?)」と、積極的にコミュニケーションを取りに来てくれます。また、トレーニング後に学食で食事をとっている時に、大学の陸上部の学生が話しかけてきて、一緒に食事をとることがありました。このように初対面の人に気さくにコミュニケーションを取れるところは日本やドイツとは違う点だと感じました。

 また、ドイツの1〜3月は寒くて雨の日が多く、トレーニングも屋内で行うことが多いですが、サンタバーバラは暖かく天候が良い日が多いので、屋外で練習を行います。多少の雨でも関係なく外で行うのには驚きました。シーズン前のトレーニングには最適な場所だと思います。

ハードルを用いたトレーニングでは体幹を意識 【写真提供:川崎和也】

 トレーニングは、メニューが固定化されていることによってトレーニング時間は短く、内容が濃いものになっています。各種目のトレーニング方法が確立されていることにより、その日のトレーニングをその場で考えることがないので、時間通りに進めることができて、クーリングダウンやリカバリー時間を確保できます。

 現地のトレーニングで重点に置かれているのは、体幹とハムストリングスを使うことです。その部分が使えずにバランスが崩れると、うまく力が発揮できません。また体幹とハムストリングスは十種競技のすべての種目で必要になってくる場所なので、その部分をトレーニングすることで効率よくすべての種目のトレーニング効果につながります。ハードルのドリルを行う時も、やり投げを行う時も、体が開かないように体幹を意識して行うようにと頻繁に指示されました。

一番困ったのは時差ボケ

ドイツに続いての遠征となる川崎。米国でも五輪を目指して努力を重ねるつもりだ 【写真提供:川崎和也】

 練習以外の面で言うと、渡航前に英語の勉強は行っていたのですが、現地では勉強の日々が続いています。食事は、特にドイツも米国でも困ることはありませんでしたが、お米が食べたくなることはありました。一度ドイツでお米を食べた時に、炊く前のお米かと思うくらい固いお米が出てきたときは驚きました。やっぱり日本食は良いと再認識することができました。

 私が一番困ったことは時差ボケでした。何も分からずにドイツへ行ったので、時差調整もうまく行えず、1週間ほど日中に眠くだるい日々が続きました。米国でも時差には苦しめられているので、日本と行く場所の時差を確認して、しっかり調整していく必要があると感じました。

 滞在が終わる頃には、ドイツと米国で学んだことをもとに、種目ごとに自分の課題と学んだトレーニングやポイントをまとめたいと思います。その後、コーチと相談をして必要なトレーニングを、普段の練習に取り入れていきたいと考えています。日本やドイツ、米国の異なった国でも種目ごとの共通点があります。押さえるべきポイントを獲得し、シーズンに挑むつもりです。また、米国の人々と積極的にコミュニケーションをとり、友達を多く作りたいです。海外の仲間が増えることで、国際大会出場へのモチベーションにもつながると思います。

 この期間を精いっぱい努力し、五輪の道へつなげていきます!

※後編は3月末に掲載予定です。

プロフィール

川崎和也(かわさき かずや)
1992年9月2日生まれ。姫路高で走り高跳びから混成に転向し、3年時に全国高校総体の八種競技で3位に入る。2011年に名門・順天堂大に進学し、4年時に日本インカレで優勝。15年に同大学院博士前期課程に進み、研究を続けながら東京五輪でのメダル獲得を目指している。

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著者プロフィール

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