なでしこの連係力を阻んだ1つの誤算 初戦で波に乗れず、五輪出場を逃す
目立った試合勘不足と連係ミス
今大会を通じて宮間(左)は相手チームから徹底的なマークに遭い、自由なプレーができなかった(写真はオーストラリア戦) 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
初戦で勝ち点ゼロと波に乗れなかったことは、五輪への連続出場、予選の自国開催といったプレッシャーを増幅させたとも考えられる。
「(リオ五輪は)絶対に出なくてはならない大会だと分かっていたので、プレッシャーは言い訳にならないです。今までは(大会の序盤で)うまくいかなくても結果は残せていた。でも今回は結果を出せなかったことで、感じるプレッシャーが大きくなっていったのかもしれません」
岩渕真奈がそう振り返ったように、やはり初戦と2戦目・韓国戦の結果が、後のなくなった第3戦の中国戦に尾を引いたと考えられる。簡潔に、断定的に敗因を語ったのは、宮間だ。いつもより小さな声で話す彼女の言葉を、記者たちは静まり返ってノートに移した。
「“何が”足りなかったではなくて、すべて。自分たちの、自分の、実力です」
人一倍気が利いて、人一倍責任感の強い宮間は、自分が仲間の長所を引き出すプレーをして、チームで勝利を味わいたかった。だが、佐々木監督のコメントにあったように、日本の選手たちは全体的に試合勘が不足しており、場当たり的なプレーや判断が多く、「らしい」プレーは影を潜めた。
それに加えて宮間本人が、相手チームから徹底的なマークに遭い、自由なプレーができなかった。セットプレーなどの精度も彼女にしてはよくなく、自身のコンディション調整にも何か問題があったのではないだろうか。
「ほんのちょっとの差が響いた」
佐々木監督は「ほんのちょっとの差が響いた」と振り返った 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
昨年のW杯時のようにサイドハーフで、または第2戦の韓国戦のようにトップ下で宮間がプレーできれば、中央での攻守の劣勢を挽回できたかもしれない。しかし、本来のボランチである宇津木瑠美は、コンディション不良との理由で登録メンバーにさえ入っていなかった。佐々木監督は宇津木と似たタイプの仕事を川村優理に期待したが、十分に機能したとは言いがたい。
なでしこジャパンは、高い連係力で互いをカバーしあい、互いの長所を引き出し合い、チームプレーで勝負する集団だ。しかし今大会は、一つの誤算が玉突き事故のように他の場所へと影響を及ぼしたため、思うようなプレーができずもがき苦しんだように見える。
「ほんのちょっとの差が響いた」と、佐々木監督は唇をかんだ。