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「真のミランの10番」に近づいた本田圭佑
今季初得点にイタリア全国紙記者も太鼓判

「もうムリだろうと思われたところで1つ山をまた越えた」

今季初ゴールを決めた本田は、背中の10番を誇らしげに両手で指した
今季初ゴールを決めた本田は、背中の10番を誇らしげに両手で指した【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

 開始5分にカルロス・バッカが挙げた先制点で1−0とリードしながら、その後はやや停滞感に包まれていたACミラン。今季、下位に低迷するジェノアに何度かカウンターを繰り出されるなど、不安要素も少なからず見て取れた。


 そんな中、“ロッソネリ”(赤と黒=ミランの愛称)のエースナンバー10・本田圭佑が後半19分、モヤモヤを吹き飛ばす大仕事をしてみせる。マティア・デ・シリオから右サイドでパスを受けるとドリブルで中央へ持ち込み、相手マークが寄せて来ないのを見逃さずに左足を一閃。約30メートルの距離から鋭いシュートをゴール右隅に蹴り込んだ。今季のセリエA25節目にして、本田のシーズン初得点は極めて劇的な形から生まれた。


 キャプテンのリカルド・モントリーボらに手荒い祝福を受けた後、本田はミランのエンブレムにキス。さらには背中の10番を誇らしげに両手で指すという派手なパフォーマンスを披露し、ミランへの愛情と忠誠心を体いっぱいに表現した。


 2016年2月14日(現地時間、以下同)、小雨の降る本拠地・サンシーロでジェノアを2−1で下したこの一戦は、彼が「真のミランの10番」に大きく近づく重要な節目となったのである。


「漠然とコースが何となく空いてるなという感じやったんで。今までなら外す流れやったけど、打ってみようかなと。まあ、入る時は入りますよね」と試合後、報道陣の前に現れた本田は喜びを抑えつつ、努めて冷静にシュートの場面を分析した。


 だが、2014年10月19日のベローナ戦以来、1年4カ月ぶりのゴールいう話題を振られた途端に苦笑い。そのうえで「僕的にはいい意味って言ったらいいんかな。みんなが僕のことをどう思ってるか分からないですけど、よくも悪くもいつも通り自分らしく、もうムリだろうと思われたところで1つ山をまた越えた。これが自分の今後の人生に大きく生きていくでしょう。またとんでもない谷底に落ちそうな時にも、僕の言葉に耳を傾けてもらえればなと思います」と率直な思いを口にし、安堵(あんど)感をにじませた。

本田が垣間見せた安堵感

本田は「ゴールより、チームが勝った方がいい」と語る
本田は「ゴールより、チームが勝った方がいい」と語る【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 目に見える結果が出なければ、自分が何を発信しても聞き入れてもらえない現実の厳しさを、本田は誰よりもよく分かっている。「優勝を狙う」と公言してはばからなかった2014年ワールドカップ・ブラジル大会で惨敗した後、「自分が言ったことに対しての責任もありますし、非常にみじめですけどこれが現実。僕が言うことの信用も下がる。全てを受け入れてまた明日から進んでいかないといけない」と言ったのは、その自覚を示す1つの象徴的出来事だった。


 ミランで昨年10月4日のナポリ戦後に自身の起用やクラブのあり方に苦言を呈した時も、イタリアのニュースサイト『alanews』のアンドレア・エウゼビオ記者のように「ミランに問題があるのは事実。本田は正論を言っているだけ」と擁護に回るメディアはほんのわずか。「試合に出ていないやつが、何を言ってるんだ」という見方が圧倒的多数を占めていた。


「勝てば官軍、負ければ賊軍」という傾向が世界一強いと言うべきイタリアで生き抜き、成功を収めようと思うなら、どうしてもゴールに直結する仕事が必要不可欠だ。本田が垣間見せた安堵感は、こうした複雑な背景から来るものなのだろう。長い時を経て、手に入れた1つのゴールによって、周囲を取り巻く空気は劇的に変化したが、本田自身は己のスタンスを変えるつもりはないようだ。


「とにかく僕はミランでのゴールより、チームが勝った方がいい。僕が勝たせたというふうに書いてもらえれば、僕は嬉しいです」というコメントが、今の偽らざる心境ではないか。

元川悦子
元川悦子

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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