「真のミランの10番」に近づいた本田圭佑 今季初得点にイタリア全国紙記者も太鼓判
「もうムリだろうと思われたところで1つ山をまた越えた」
今季初ゴールを決めた本田は、背中の10番を誇らしげに両手で指した 【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】
そんな中、“ロッソネリ”(赤と黒=ミランの愛称)のエースナンバー10・本田圭佑が後半19分、モヤモヤを吹き飛ばす大仕事をしてみせる。マティア・デ・シリオから右サイドでパスを受けるとドリブルで中央へ持ち込み、相手マークが寄せて来ないのを見逃さずに左足を一閃。約30メートルの距離から鋭いシュートをゴール右隅に蹴り込んだ。今季のセリエA25節目にして、本田のシーズン初得点は極めて劇的な形から生まれた。
キャプテンのリカルド・モントリーボらに手荒い祝福を受けた後、本田はミランのエンブレムにキス。さらには背中の10番を誇らしげに両手で指すという派手なパフォーマンスを披露し、ミランへの愛情と忠誠心を体いっぱいに表現した。
2016年2月14日(現地時間、以下同)、小雨の降る本拠地・サンシーロでジェノアを2−1で下したこの一戦は、彼が「真のミランの10番」に大きく近づく重要な節目となったのである。
「漠然とコースが何となく空いてるなという感じやったんで。今までなら外す流れやったけど、打ってみようかなと。まあ、入る時は入りますよね」と試合後、報道陣の前に現れた本田は喜びを抑えつつ、努めて冷静にシュートの場面を分析した。
だが、2014年10月19日のベローナ戦以来、1年4カ月ぶりのゴールいう話題を振られた途端に苦笑い。そのうえで「僕的にはいい意味って言ったらいいんかな。みんなが僕のことをどう思ってるか分からないですけど、よくも悪くもいつも通り自分らしく、もうムリだろうと思われたところで1つ山をまた越えた。これが自分の今後の人生に大きく生きていくでしょう。またとんでもない谷底に落ちそうな時にも、僕の言葉に耳を傾けてもらえればなと思います」と率直な思いを口にし、安堵(あんど)感をにじませた。
本田が垣間見せた安堵感
本田は「ゴールより、チームが勝った方がいい」と語る 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】
ミランで昨年10月4日のナポリ戦後に自身の起用やクラブのあり方に苦言を呈した時も、イタリアのニュースサイト『alanews』のアンドレア・エウゼビオ記者のように「ミランに問題があるのは事実。本田は正論を言っているだけ」と擁護に回るメディアはほんのわずか。「試合に出ていないやつが、何を言ってるんだ」という見方が圧倒的多数を占めていた。
「勝てば官軍、負ければ賊軍」という傾向が世界一強いと言うべきイタリアで生き抜き、成功を収めようと思うなら、どうしてもゴールに直結する仕事が必要不可欠だ。本田が垣間見せた安堵感は、こうした複雑な背景から来るものなのだろう。長い時を経て、手に入れた1つのゴールによって、周囲を取り巻く空気は劇的に変化したが、本田自身は己のスタンスを変えるつもりはないようだ。
「とにかく僕はミランでのゴールより、チームが勝った方がいい。僕が勝たせたというふうに書いてもらえれば、僕は嬉しいです」というコメントが、今の偽らざる心境ではないか。