アメリカズカップへ思いを馳せる新戦力 五輪の夢破れた2人の未知なる挑戦
順位アップの鍵を握る存在
アメリカズカップに挑戦しているソフトバンク・チーム・ジャパン 【中山智】
ヨットレースの最高峰「アメリカズカップ」に日本から挑戦しているソフトバンク・チーム・ジャパンのクルー(乗組員)として新たに加わった吉田雄悟と笠谷勇希の2人だ。
アメリカズカップは現在、2017年の本大会に向けて、予選シリーズの「アメリカズカップ・ワールドシリーズ」を開催している。
第3戦の終了時点でソフトバンク・チーム・ジャパンは6チーム中5位という成績。とはいえ2016年のワールドシリーズは、全5〜6戦の開催を予定しており、まだまだ順位アップのチャンスは十分にある。
そこで重要なポイントとなるのが新戦力だ。今年は昨年よりもレース数が増え、クルー(乗組員)にとって、よりハードなシーズンとなる。さらに、本大会で使用されるレース艇はワールドシリーズとは異なり、乗艇人数も5人から6人と増える。これまでレースクルーをギリギリの人数で戦ってきたソフトバンク・チーム・ジャパンにとって、優秀なクルーの育成は必要不可欠といえる。
その注目される新戦力が、昨年11月末に行われた選考会に合格した吉田と笠谷だ。
五輪を目指していた吉田と笠谷
クルーとして新たにチームに加わった吉田雄悟(右)と笠谷勇希 【写真は共同】
五輪の選考レースでは好調で、最終日の前日まで選考対象チームとしてはトップに立っていた。「最終選考の前日までリオには絶対に行ける」と思っていた吉田だが、レース最終日に土居一斗、今村公彦チームに逆転され、リオ五輪の出場権を逃してしまった。
レース終了後、吉田はつかみかけていた五輪の切符を失ってしまい、「何も手に付かない状態」にまで落ち込んでいたという。そんなときに彼が目にしたのが、ソフトバンク・チーム・ジャパンのクルー募集だ。同じセーリング競技ながら、五輪という世界から、アメリカズカップという世界に舞台を変えて戦うことを選んだ。
笠谷も競技は違うが、吉田と同じく五輪を目指していたアスリートだ。笠原は一橋大学でボート部に入部。高校までは帰宅部だった笠谷だが、全日本選手権への出場などボート競技での実力を伸ばした。在学中に開催されたロンドン五輪の出場はかなわなかったものの、日本代表の最終選考まで残るほどに成長した。
大学卒業後はリオ五輪を目指し、社会人として仕事をしながら自分でチームを作ってトレーニングを続けていた。しかし「自分で作ったチームだけに、実業団などと比べて環境面で厳しかった」と、リオ五輪の選考から漏れてしまう結果となった。
その後、20年の東京五輪を目指すかどうか悩んでいた時期に、吉田と同じくソフトバンク・チーム・ジャパンのクルー募集の情報を得る。笠谷は「ヨット競技はまったくなじみがなかったのですが、世界を舞台に戦える」ことに魅力を感じ、応募したという。