前田健太、異例の契約に至った3つの理由 ドジャースとの契約過程を振り返る
身体検査の結果は“軽微”を強調
ドジャースはカーショーを筆頭に先発左腕がそろう 【Getty Images】
「8年もの長い契約になればマエダに限らずどんな投手でもケガのリスクが伴う。我々は彼のリスクを共有した上で、たとえ彼に何か起こったとしても、必ず復帰してチームの戦力になってくれると信じている」
このように説明してくれたフリードマン氏も実際のところ前田の身体検査の結果について「asymptomatic(兆候や症状が認められない状態)」とし、ほとんど問題視していなかった。もちろん前田自身も「不安はまったくないです。ゼロです」と言い切っている通りだ。
必須だった右の先発投手
さらに現在のMLBの潮流は、メジャーの先発投手5人でシーズンを最後まで戦うのは無理であり、マイナーに補充の先発投手を用意していくのが当たり前になってきている。そのためドジャースはこのオフ、先発投手の補強にかなり躍起になっていたといわれている。しかもグリンキー再契約、岩隈獲得に失敗し、現在メジャーの先発候補投手はすべて左投手ばかり。ある程度計算できる右の先発投手として、前田はドジャースが最も欲している人材だったのだ。
総獲得資金に対する明確なビジョン
「2000万ドルを支払うことを考えると短期契約は難しかった。入札金分を分担させるためにも長期契約が必要で、効果的な支払いが求められた」
つまり途中で契約破棄できるオプション権を含まない8年間が完全保証された長期契約を結ぶに至ったのは、ドジャースからすればリスクマネージメントの一貫でもあったわけなのだ。だがその一方で、長期契約保証は前田にとって大きなインパクトをもたらした。
「(ドジャースから)長期に渡って保証をしてもらい、最大限の評価をしてもらったと思う」
会見上で断言しているように、身体検査の結果を知りながらの長期契約提示は間違いなく前田の心の琴線に触れることになった。保証年俸は300万ドル(約3億5000万円)だが、自分の頑張り次第ですべてのインセンティブをクリアすれば米メディアによると8年で総額1億620万ドル(約118億円)を得られる可能性があるのだ。最終的には何の迷いもなくドジャース入りを決断したことだろう。
こうして両サイドの思惑が見事に合致し、“ドジャース前田”が誕生した。このままハッピーエンドに終わるかどうかはもちろん誰にもわからない。すべて前田の右腕にかかっているのだ。