富士山女子駅伝から東京五輪へ――原石たちがつなぐたすきのドラマ[1]
優勝候補は立命館
10月の全日本大学女子駅伝で力走する大森菜月(立命館大)ら 【写真は共同】
なぜこうも強いのか。「何でしょうね。毎年必死なんですよ」と十倉みゆきヘッドコーチ。ただ今年の全日本大学女子駅伝に限っては、「うちに勝とうという他大学の雰囲気を特に感じました」と言い、ユニバーシアード女子ハーフマラソン準優勝の菅野七虹(3年)をケガからの回復途上のために欠いたことで、「みんなが危機感を持ち、一丸になってくれました」と完全優勝の背景を明かす。
15年度の女子長距離部員は22人。高校駅伝の強豪として知られる系列校・立命館宇治高の主力をはじめ、「大学女子駅伝で日本一になれるチーム」に憧れる有望選手が扉をたたく。
選手たちは競技力と同様に目的意識も高い。十倉ヘッドコーチは「大学4年間だけ頑張るというよりも、『実業団で通用する力を大学でつけて、卒業したら実業団でさらに頑張り、日本代表として世界のレースに出て行きたい』という夢を持って取り組んでいる学生が増えてきました」と話す。日本一になれるチームの秘けつはこのあたりにありそうだ。
しかし実際の勧誘現場は立命館大とて楽ではない。高校トップクラスの選手の中には、20年まで5年を切り、東京五輪を目指すなら大学に行っていたのでは間に合わない、実業団で鍛えて力を伸ばしたいと、大学からの勧誘を断るケースもあるという。
立命館大で駅伝を走った歴代選手では、00年卒の加納由理さんが09年世界陸上女子マラソンで7位入賞しているが、五輪選手はまだ出ていない。実業団に進んだ卒業生はもちろん、5000メートルで現役女子大生トップの15分28秒32を持つ大森菜月(3年)や菅野ら在学生に、大学女子駅伝日本一のチームの夢が託されている。
女王・立命館を追うのは?
前回大会2位の大阪学院大は10年に熊本で高校駅伝の強豪校を率いた志水貢一監督が就任。新体制で駅伝強化に乗り出した。高校時代の土台に“貯金”を上積みし、3年生、4年生で記録を伸ばす、いわば「4年間育成」の視点で指導し、実業団に進む選手を輩出している。現役では今年のインカレ女子5000メートルで立命館大の大森に競り勝って優勝した新井沙紀枝(3年)がいる。同大1995年卒の高橋尚子さん(2000年シドニー五輪女子マラソン優勝)に続くヒロイン誕生が待たれる。