早稲田はなぜ勝てなくなったのか? 岐路に立つラグビー界の名門
「変化しようとしすぎてブレてしまった」
166センチと小柄ながらも、CTBとして体を張り続けた岡田主将 【斉藤健仁】
最終学年のFB藤田に、大学では日本一になれなかった原因を問うと、最初に「難しいところですね……」としかめ面をして、こう続けた。「早大だけでなく、大学ラグビーは良い伝統も悪い伝統もあります。ただ、最新のラグビーをもっと学ぶことも大切です。また大学は体作りばっかりに特化するチームが多い。大学の中だけは良いかもしれないですが、スキルも同時にやらないといけないし、日本はスキルで上回らないといけない。日本代表がワールドカップで勝てたのは同時進行したからだと思います」
「人材不足」でも工夫で勝つのが早大の伝統
「スキルや状況判断で勝負できるように」と語る2年生SO横山 【斉藤健仁】
2004年から2009年まではスポーツ科学部の推薦で4〜5名が入部(それ以外の自己推薦の入部は年度による)。また2009年、他の学部の自己推薦も入れればなんと17名が推薦で合格して入部していた。ただ、2010年以降はトップアスリート入試とスポーツ推薦で合計2〜3名と減少した(2016年度は計4名に増加)。
また昨今の不景気も影響し、寮生活とはいえ、学費が比較的高い東京の私立大入学をためらう選手も出てきたのは事実だ。早大の推薦を蹴って、学費免除となった他大学に進学し、現在トップリーガーとして活躍している選手もいる。また早大の寮は相部屋のため、大学に併設している個室の寮や自分で借り上げたアパートに住むことができる筑波大に進学した有望選手もいた。ただ高校日本代表が集まらなくても、指導や戦い方で工夫しつつ、一般入試で入ってきた選手が中心選手として成長するのが早大の伝統であり、それがファンの心を打ってきたはずだ。
やはり「人材不足」は言い訳にしてはいけない。2年生のSO横山陽介は、真剣な表情でこう来シーズンを見据えた。「早大は体が小さい選手が多い。留学生や花園で活躍した選手が多いチームにどういうところで勝つか考えたとき、体の大きさで勝つには限界がある。スキルや状況判断で勝負できるようにもっと伸ばしていかないと行けない。来シーズン、部員全員がそういったことを意識したい」
最終戦で何を残すことができるのか
藤田は東海大戦に向けて「リベンジをして良い終わり方をしたい」と闘志を燃やす 【斉藤健仁】
ただ岡田組には12月27日、東海大戦が残っている。「自分たちがやることは試合に勝つこと」と岡田主将が言えば、藤田は「もう負けるのはいやですね。(昨年の)リベンジをして良い終わり方をしたい。このチームがそんなに弱くなかったことを見せたい」と大学最後の戦いに闘志を燃やした。
4年生が3年生以下に何を残すことができるのか。プレーで、背中で語る重みがあるはずだ。その伝統を感じることが来シーズンへのスタートとなる。