早稲田はなぜ勝てなくなったのか? 岐路に立つラグビー界の名門

斉藤健仁

2年連続で大学選手権4強入りを逃す

2年連続で大学選手権4強入りを逃した早稲田大 【斉藤健仁】

 今シーズンも「アカクロ」の伝統ジャージは、正月を越えることができなかった。

 大学ラグビーはいよいよ佳境を迎え、12月27日、大学選手権のセカンドステージ第3戦が行われる。セカンドステージは各地域リーグを勝ち抜いた16チームが4つのプールに分かれ、3試合の総当たり戦を行い、首位のみが1月2日の準決勝に進出する。

 大学選手権で最多の15回の優勝を誇る早稲田大は、昨年度は東海大に敗れてセカンドステージで敗退した。今年度の関東大学対抗戦で、早大は筑波大(●25対45)、帝京大(●15対92)、明治大(●24対32)に敗戦し、4位で大学選手権のセカンドステージに進出。関東リーグ戦王者・東海大、関西2位の天理大、朝日大と同じプールBに入った。

 今年も東海大と同じプールに入り、早大の後藤禎和監督は「(最初の2戦に勝利して)弾みをつけて(最終戦の)東海大には昨年の借りをキッチリ返したい」と意気込んでいた。だが、早大は初戦でつまずく。12月13日の初戦・天理大戦で、10対14で敗戦。第2戦、早大は朝日大に快勝するも、東海大が2連勝したため、3戦目で早大が東海大に勝っても勝ち点で上回ることができず、東海大のプール首位が決定。早大は今シーズンも準決勝に進出できなかった。

「ポッド」を採用も問題点が残る

ワールドカップ日本代表の藤田も奮闘したが、チームを優勝に導くことはできなかった 【斉藤健仁】

 後藤監督が率いて4シーズン目、早大は「INNOVATION(変革)」を掲げて臨んだ。昨年まで日本代表に帯同していた村上貴弘氏をストレングス&コンディショニング(S&C)コーチにフルタイムで招聘、過去3年コーチを務めていた銘苅信吾氏をヘッドコーチに据えた。春からアタックでは、FWとBK一体となって3つのユニットでボールを大きく動かす「3ポッド」を、ディフェンスでは前に出るブリッツディフェンスを採用していた。

 だが、「ポッド」では、SOやCTBの位置に入った選手が、外にスペースを作るための動きがほとんど見られなかった。カットアウトしてからカットインして、対面に仕掛けてからパスしなければいけない。ただ流れてパスをすると、相手のディフェンスもドリフトできる。すると強豪相手には外の味方にスペースが残った状態で1対1を作れない。ポジショニングはしているが、細かいところまで落とし込むことはできていたとは言いがたい。ポッドは導入すること自体は簡単だが、ポジショニングだけで終わってしまうチームはよく見られる。

天理大戦で奪われた2トライの原因

早明戦では、後藤監督が「春からしつこくやってきた」と語ったドライビングモールが機能した 【斉藤健仁】

 ディフェンスでも前に出る意識が強すぎて、トラッキングという基本がないがしろにされていたことが終始、気になっていた。前に出てタックルする場合でも、少しスピードを落としてショートステップを踏みつつタックルしなければいけない。天理大戦で奪われた2トライは、まさしく、そこを突かれた。エディージャパンにおいてさえも、2012年の春、タックルの基本を歩いて体を当てるところから指導していたように、基本の徹底は上のレベルになればなるほど欠かせない。「わかる」から「できる」ようにするのはコーチングの問題である。

 そんな早大が、シーズン終盤になって頼りにしたのがゴール前のドライビングモールだった。「FWはサイズも能力もないので春からしつこくやってきた」(後藤監督)。対抗戦の最後の試合となった早明戦では、特に後半、モールが機能し接戦に持ち込んだ。だが、天理大戦では、まず、モールを組む機会自体をあまり作ることもできなかった。ラックからモールを作って攻め込む「リモール」も練習していたようだが、高校強豪の御所実(奈良)のように、絶対的な武器まで仕上げることはできなかった。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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