連続トリプルスリーの課題は盗塁? 史上初の偉業達成は周囲の理解も必要

ベースボール・タイムズ

過去の達成者から見る課題は?

西鉄・野武士軍団の中心打者として活躍した中西太は20歳だった53年にトリプルスリーを達成した 【写真は共同】

 松井以外のその他の面々の成績を見ても、2度目のトリプルスリー達成がノーチャンスだったという訳ではない。

 能力的に最も可能性が高かったのは、弱冠20歳で偉業を達成した中西だろう。高卒1年目に新人王、2年目にトリプルスリーを達成し、引退後も多くの強打者を育て上げた打撃職人は、53年から3年連続で30本塁打以上を放ち、55年から4年連続で打率3割以上をマークした。特に55年は打率3割3分2厘、35本塁打と2項目を軽々とクリア(盗塁数は19)。年齢的にもスピードの衰えは考えにくく、盗塁数にこだわれば30盗塁はクリアできたはずだ。

 その次に可能性が高かったのが、西武の黄金期を支えた秋山だ。抜群の身体能力を誇り、85年から9年連続で30本塁打以上をマークし、30盗塁以上は計3度、90年には51盗塁で盗塁王のタイトルも獲得した。打率3割以上は2度だけだったが、打率2割9分台が3度あった。数字的には打率2割9分7厘、35本塁打、21盗塁に終わった91年が惜しかった。

 44歳まで現役を続けた金本は、広島時代に2ケタ盗塁を計6度マークしながら、阪神移籍後は初年度の18盗塁を最後に盗塁数がひとケタ台に減少。05年に自己最高の打率3割2分7厘&40本塁打を記録したが、盗塁数はわずか3個だった。これには年齢的なもの、そして故障、さらに打順、求められる役割が変われば必然的にプレースタイルも変化する。トリプルスリーを狙うには、本人の意識とともに周囲の理解、協力も必要になる。

年齢的な不安はなし

 翻って2016年。球界の世代交代を告げるが如く、13年ぶりの偉業を、65年ぶりの同時達成で成し遂げた柳田悠岐、山田哲人の2人は、史上初となる“2年連続トリプルスリー”への挑戦権を持っている。

 今季の柳田(打率3割6分3厘、34本塁打、32盗塁)、山田(打率3割2分9厘、38本塁打、34盗塁)の両選手の成績を見ても、達成へのカギは盗塁数だろう。固め打ちすれば打率は一気に上昇し、マルチ本塁打も柳田が今季4回、山田は5回(1試合3本塁打1回を含む)記録した。その一方でマルチ盗塁は、山田が5回記録したが、柳田は1回のみ。盗塁は地道にコツコツと走り続けるしかない。

 年齢的な不安はない。柳田は来年28歳で、山田に至っては24歳とまだまだ伸び盛り。スピードの衰えは見られず、打順も今季と同じ3番に座ることができるはずで、求められる役割も変わらない。あとは本人たちの盗塁への意識、そして怪我をしないこと。走り続けることのできる肉体を、常に維持することが大事になる。

 そもそも、二兎を追うことでさえ困難なことである。これが“トリプル”になれば、その難易度の高さは言うまでもない。新語・流行語大賞を受賞した芸人は“一発屋”で「来年消える」というジンクスがあるが、日本球界に誕生した2人の新スターにとっては無関係だろう。「史上初の2年連続トリプルスリー達成!」。来季、その言葉が聞けることを期待したい。

(文・三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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