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福岡を“約束の地”へと導いた中村北斗
7年ぶりの古巣復帰、葛藤の末の目標達成

87分、“昇格決定弾”へのプロセス

87分、同点ゴールを決めた福岡の中村北斗(右)
87分、同点ゴールを決めた福岡の中村北斗(右)【写真は共同】

「あそこで中村北斗にこぼれたというのは、みんなの気持ちがそういうふうにさせたのかなと思う」(福岡・井原正巳監督)


 そのゴールは87分に生まれた。12月6日に行われたC大阪とのJ1昇格プレーオフ決勝でのことだ。


 始まりは北斗のボール奪取。そして、北斗から受けたボールを中原貴之が落とした瞬間に、福岡の攻撃のスイッチが入る――。それをフォローして持ち上がったのは坂田大輔。その坂田からのスルーパスを受けて金森健志が果敢に仕掛ける。


 その動きに呼応して左サイドをオーバーラップするのは亀川諒史。金森からのパスを受けた亀川は、GKと最終ラインの間にグラウンダーのパスを流し込む。そして最後を締めたのも北斗。亀川のクロスはファーサイドに流れたように見えたが、それが分かっていたかのように走り込んできた。


 渾身(こんしん)の力を込めて振り抜く右足。揺れるゴールネット。その瞬間、ゴール裏スタンドを埋め尽くした福岡サポーターの思いが爆発する。「みんなの魂を右足で突き刺した」(北斗)ゴール。1−1の同点に終わり、リーグ戦で上位の福岡が5年ぶりのJ1復帰を果たした。

7年ぶりの福岡復帰へ期する思い

「J1昇格のために力になりたい」


 7年ぶりの復帰が決まったとき、北斗はそう話していた。福岡なら自分らしいプレーが見せられる。そうも話していた。「移籍をしても、自分の中ではアウェーの選手、よそ者の選手と思ってやっていた。福岡は、自分を築き上げた場所という思いが自分の中にあって、プレーしながら、やっぱり福岡だなあという感じがある」。北斗にとって福岡は特別なチーム。それはいまも昔も変わらない。


 ただ、序盤戦は思うようにコンディションが上がらず、葛藤を抱えながらのプレーだった。福岡なら、自分の良さをもっと、もっと発揮できると思いながらも、最大の特長である攻撃面での強引さを出せない日々が続いたからだ。左サイドの金森、亀川のコンビネーションが攻撃のストロングポイントになっているという事情も重なっていた。「アシストに絡むプレーだったり、高い位置でボールをもらう動きが強みになれば、自然とボールが集まってくるはず。まずは信頼を勝ち取ることが大切」。シーズン中には、そんな言葉も口にしていた。


 だが、博多の森(現・レベルファイブスタジアム)のサポーターは北斗を応援し続けた。北斗にとって福岡が特別な存在であるように、サポーターにとっても北斗は特別な存在。彼自身がどうすることもできない事情でチームを離れたときから、いつかは必ず北斗と一緒に戦うという気持ちを持ち続けていた。かつて、韓国との親善試合で負ったひざのけがの影響は否定できなかった。けれど、北斗なら、博多の森球技場を沸かせたプレーで、必ずチームを引っ張ってくれると信じていた。一緒に戦ってJ1に行くと決めていた。


 そして、北斗は、やはり北斗だった。「自分が結果を出して、北斗さんなら決めてくれるという信頼を勝ち取って、プレーでも、そうじゃないところでもチームを引っ張っていけるようになって、初めて自分がチームに戻って来た意味がある」。そうも話す北斗は、昇格に向けて最も大事な終盤戦に力を見せ始めた。第27節・大分戦でのシュートは、なぜかオフサイドの判定でゴールとして認められなかったが、「攻撃のところで結果が出れば、自分のコンディションが上がっていくのは前から思っていたこと」という言葉どおり、ここから北斗らしいプレーが増えていく。

中倉一志

1957年生まれ。サッカーとの出会いは小学校6年生の時。偶然つけたTVで伝説の「三菱ダイヤモンドサッカー」を目にしたのがきっかけ。長髪をなびかせて左サイドを疾走するジョージ・ベストの姿を見た瞬間にサッカーの虜となる。大学卒業後は生命保険会社に勤務し典型的なワーカホリックとなったが、Jリーグの開幕が再び消し切れぬサッカーへの思いに火をつけ、1998年からスタジアムでの取材を開始した。現在は福岡に在住。アビスパ福岡を中心に、幼稚園、女子サッカー、天皇杯まで、ありとあらゆるカテゴリーのサッカーを見ることを信条にしている

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