福岡を“約束の地”へと導いた中村北斗 7年ぶりの古巣復帰、葛藤の末の目標達成

中倉一志

久しぶりに響いた“北斗節”

5年ぶりのJ1復帰を決めた福岡。しかし、スタートラインに立ったにすぎない 【写真は共同】

 今季初ゴールは第38節、アウェーでの徳島戦。初ゴールの感想を尋ねると「もっとベンチが喜んでくれてもいいんじゃないかな(笑)」と、久しぶりに”北斗節”も飛び出した。そしてここからの5試合で3得点。特に第41節・愛媛戦では、結果的に2位の磐田に勝ち点で並ぶことになる貴重な決勝ゴールを挙げた。自分の中にある葛藤と向き合い、折り合いを付けながら戦ってきた北斗は、チームが少しずつ成長を重ねていったように、コツコツと自分を取り戻していった。リーグ戦で、そして雁の巣球技場で自信を漂わせる姿は、北斗の完全復活を思わせるモノ。「やっぱり福岡だなあ」。北斗はそうつぶやいた。

 そして、チームをJ1へ導くゴール。誰もが待っていた北斗のゴール。その瞬間、誰もが涙を流した。本人に、そんな話を伝えると、こんな言葉が帰ってきた。

「いや、ゴールを一番決めてほしいと思われているのは城後(寿)でしょ。僕自身もそういう気持ちがある。自分は二番目、いや三番目くらいかな」

 それもまた、北斗らしい言葉だ。そして、こうも話した。

「古くから福岡を応援してくれているサポーターの中には、自分が決めることで喜んでくれた人もいると思う。もし、いまサッカー人生を終えると仮定すれば、一番何が残っているのかと聞かれたら、真っ先に思い浮かぶゴール」

 かくして、J1昇格を決めたいま、次のように話す。

「いまはホッとしている。けれど、J1が、そんなに甘くはないのは分かっている。もっと危機察知能力を上げないといけないし、今日の玉田(圭司)さんのゴールがJ1のゴール。あれが当たり前になるので、もっと、もっとレベルアップしなければいけない。上がっても、すぐに落ちてくるのであれば意味はない。しっかりと土台を築きあげていきたい」

 福岡へ戻ってきた目標の一つは果たした。けれど、それはスタートラインに立ったという意味しか持たない。大切なのはこれから。J1で“福岡旋風”を起こすという気持ちを胸に、北斗は、これからもサポーターとともに戦い続ける。

中村 北斗(なかむら・ほくと)

1985年7月10日生まれ、30歳。長崎県出身。167cm/69kg。喜々津SSC→長崎FC→喜々津中→長崎FC→国見高校→アビスパ福岡→FC東京→大宮アルディージャを経て、2015年福岡に復帰。J1通算99試合出場5得点。J2通算129試合10得点(2015年12月9日現在)。

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著者プロフィール

1957年生まれ。サッカーとの出会いは小学校6年生の時。偶然つけたTVで伝説の「三菱ダイヤモンドサッカー」を目にしたのがきっかけ。長髪をなびかせて左サイドを疾走するジョージ・ベストの姿を見た瞬間にサッカーの虜となる。大学卒業後は生命保険会社に勤務し典型的なワーカホリックとなったが、Jリーグの開幕が再び消し切れぬサッカーへの思いに火をつけ、1998年からスタジアムでの取材を開始した。現在は福岡に在住。アビスパ福岡を中心に、幼稚園、女子サッカー、天皇杯まで、ありとあらゆるカテゴリーのサッカーを見ることを信条にしている

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