高橋大輔、人々の心を打った流血の演技 写真で切り取るフィギュアの記憶(3)
「高橋大輔 全日本選手権男子FS(2013年)」
【坂本清】
「これが最後になるかもしれないですし、最後になってもいいという気持ちで感謝を込めて、演じました」
ケガをおしての出場だった。ソチ五輪への切符が懸かっていなければ、無理はしなかっただろう。その影響もあり、演技にはやはり精彩がなかった。SP、FS共に挑戦した4回転はいずれも失敗した。五輪に行けなれば引退。そう決めていた。
「終わった瞬間に『五輪はもうないんだろうな』と。僕のスケート人生で一番苦しかった全日本だと思います。その厳しい壁を乗り越えられなかった自分自身に対して腹が立つし、悔しいです」
涙目でそう語る姿から、彼がいかにこの試合に懸けていたかを知った。結果は5位。ただ、流血の演技は間違いなく人々の心を打った。そして翌日、彼は五輪の切符も手にしたのだった。
(文:大橋護良/スポーツナビ)
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