【RIZIN】ヒクソン・グレイシー独占インタビュー「忘れかけた武士道を思い出してほしい」

長谷川亮

マスターズ参戦は否定「完全にやり切った」

――ヒクソンさんご自身のこともお聞きしたいのですが、現在トレーニングはどのように行っているのですか?

 今はあまり無理をせずに体を動かしています。慢性的なケガもあるので、柔術に関しては指導をしたり、軽くスパーリングをしたりするだけで、あとはジムでのトレーニングや、ストレッチをして柔軟性に気を付けています。他には趣味で大好きなサーフィンもやっています。でもこれらすべての運動は無理をせず、軽く楽しんでやる程度です。私はもう何かを証明をする必要もないですし、逆にケガをして好きなことができなくなるような後悔はしたくないので、無理することなく楽しんでやっています。

――今も十分強そうな雰囲気を発していますが、もう戦うことはないですか?

 私はもう自分自身を変えるつもりは一切ありません。やはり肉体には限界というものがあり、肉体的な衰えも感じているので、無理をせず自分の与えられた人生を楽しみ、他の人を助けたり指導したりすることで日々を過ごしています。

――ぜひRIZINでの実施がアナウンスされているマスターズクラスで試合をされてはと思ったのですがいかがでしょうか?

 それはないでしょう。私は戦うこと、競い合うことに関しては完全にやり切りました。今は指導をする一方で、新たな連盟を立ち上げました。そこでは、柔術の本来の目的であるセルフディフェンスの復興や、道場のプログラムや大会のルールもより実戦的なものになるよう働きかける、そういった活動をしています。

RIZINは革命的なアプローチを行う

自身のマスターズ大会参戦は否定。それでも、RIZINの未来に期待している 【長谷川亮】

――RIZINはかつてのPRIDEの流れを組むイベントですが、ヒクソンさんにとってPRIDEはどのような存在であったのでしょうか?

 PRIDEは私にとって素晴らしい大会で、大舞台で私にスポットライトを当ててくれました。そして私のプロとしてのキャリアの手助けをしてくれた舞台で、そのルールも実戦的で素晴らしいものだったと思っています。現在のユニファイドルールは武士道精神をなくしてしまい、戦いをゲーム・スポーツ化してしまっているのではと思います。しかし、RIZINのルールは完全決着を求める武士道精神を復活させるものだと思っています。現在のユニファイドルールですと、選手たちは勝ちに行く試合をするのではなく、負けないための試合をする姿勢が目立ちます。各ラウンドをポイント制にすることで、いかに楽してポイントを取って勝つか、そういう戦略で戦う選手が目立ってきています。そしてそういう戦法を取ると、観客も判定の場合、どちらが勝ったのかよく分かりません。このRIZINのルールというのは、より実戦的な状況を作り出すことで完全決着が生まれ、現在のMMAに対して革命的なアプローチになると思います。そういった大会に携われることを非常に喜ばしく思いますし、クロンを参戦させることができ非常にうれしく感じています。

――RIZINがPRIDEのルールを受け継ぐ点も高く評価されているようですね。

 金網で試合をするには、どんな強者であってもまず金網を使った戦い方を覚えなければいけません。どんなに良いファイターであっても、ケージファイトというジャンルでもう一度学ばなければならず、金網というのはいわば選手2人の肉体と肉体以外のもの、第3の要素です。真の戦いというのは“金網の中でどちらが強いのか”ではなく、肉体と肉体のみの戦いであるべきではないでしょうか。私はケージではなくリングこそが、より真の戦いに近づける舞台だと思っています。

――ヒクソンさんの戦いに関するお考えがよく分かりました。それではRIZIN、そしてクロンvs.アーセン戦に期待する方々へメッセージをお願いします。

 私はRIZINに携わることができ非常にうれしく思っています。日本は武道を生んだ国で、日本人は武士道精神、戦士の志や精神面といったものを非常によく理解してくれる人たちだと思っています。このイベントを通して、そういった忘れかけた気持ちや精神に共感して、思い出す機会にしてもらえればと思います。

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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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