アルゼンチンとブラジルが直面する危機 W杯南米予選序盤でつまずいた2強

浮き彫りになるメッシの重要性

アルゼンチン国内ではメッシの復帰とともに問題も解決されるという考えも多いようだが… 【写真:ロイター/アフロ】

 アルゼンチンにとってバルセロナのスターの重要性は、ピッチにいる時以上にいない時にこそ明確に認識される。コパ・アメリカ敗戦後には、一部のファンやメディアから最も厳しい非難を受けていたものの、メッシほど爆発的な加速力を持ち、かつトップスピードでもプレー精度が全くブレない選手は他に存在しない。ゆえに、彼の不在は明確にチームのプレーに影響を及ぼすことになる。

 年明け以降はメッシの復帰とともに問題も解決される。そう考えている人も多いようだ。確かに全18試合の南米予選はまだ14試合も残っている。だが第3節終了時点でアルゼンチンが10チーム中9位に位置し、下にはベネズエラしかいなかったことは事実だ。

 11月17日、灼熱のバランキージャで行われたコロンビアとのアウェー戦を1−0で制したことで、アルゼンチンはようやく胸を撫で下ろすことができた。だがもしこの試合で勝てていなければ、チームを取り巻く危機感はいよいよ深刻なものとなっていただろう。12月にはアルゼンチンフットボール協会(AFA)の新会長が選出されるが、新会長がマルティーノとの契約を見直すことになっていたかもしれない。

 笑顔で勝ち点1を持ち帰ったブラジルにしても、そのプレー内容が平凡なものだったことに変わりはない。だがアルゼンチン相手に勝ち点を手に入れることは難しいと見ていたのだろう、彼らは終了間際のダビド・ルイスの退場も気に留めることはなかった。

 おそらくドゥンガは確信しているのだ。ネイマールはバルセロナで見せているプレーレベルを徐々に代表でも取り戻していく。そしてブラジルがW杯出場権を手にするチャンスは遠のくどころか、予想以上に穏やかな道のりになりそうだということを。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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