では、リオ五輪ではどのような国がライバルとなっていくだろうか。水鳥監督が挙げたのはやはり中国だった。今回は３位に終わったが、演技構成の難度を示すＤスコアは日本より上。団体決勝ではミスが目立ち、Ｅスコアの評価が低かったが、種目別決勝ではさすがの実力を見せていた。

　水鳥監督は「今回の中国は実力を出し切ったとは思えない。種目別では平行棒で団体決勝以上の１６．２台を出した選手がおり、つり輪でも種目別のほうが点を伸ばしてきた。中国が種目別決勝のような試合をしてきたら勝てるかどうか。難しいと思う」と警戒する。

　中国以外の国はどうか。今回２位だったイギリスに関しては、ミスがなかったことで力を出し切っての２位と見ている。水鳥監督が警戒しているのは２位のイギリスや４位のロシアよりむしろ、サミュエル・ミクラクやジョン・オロスコといった主力が出場せず５位になった米国だ。「中国に脅威を感じると同時に各国の追い上げも警戒しなければ。油断すると一気に４位まで落ちてしまう」と言う。

　国際体操連盟（ＦＩＧ）は、０５年を最後に１０点満点が廃止されたことによって技の難度が年々上がり続け、アクロバットの要素が強くなっていることに危機感を示している。近年、ブルーノ・グランディ会長はことあるごとに「技を美しく成功させてこそ体操だ」と説いている。

　今回の世界選手権ではそういったＦＩＧの啓蒙（けいもう）が採点にしっかりと反映されていた。伝統的に美しさを追求してきた日本にとっては良い流れができている。リオ五輪でもまずは正確で美しい実施を目指すという基本姿勢にこだわりたい。

　代表選手の構成については、今回の世界選手権の各国の動向も分析しながら、年内に決めていく方針だ。世界選手権の代表は６人だが、五輪は１人少ない５人。内村への負担を減らしたいところではあるが、現実的には全６種目を任せることになるのも致し方ないだろう。

　内村には今回の個人総合金メダルによって代表内定が出ており、実質的には残り４枠。種目別ゆかで金メダルを取った白井も含め、激しい代表争いが待っている。

　水鳥監督は「萱が今回世界選手権の代表入りするとは１年前ならほとんどの人が想像していなかったこと。１年で変わるチャンスがあるので、若い選手には得意種目を伸ばして世界で戦えるようになってほしい」とエールを送る。

　リオ五輪での金メダル獲得へ向け、日本に必要なのは元来の美しい体操に磨きをかけながら、個々の力量を伸ばしていくこと。ケガに注意しながらトレーニングを続けていくこと。また、内村を除く４選手のメンバー構成をどのようにすべきかを精査して代表選考ルールをつくることも必要だ。金メダル奪回のためにやるべきことは多い。