指導者のキャリアを歩み始めた宮本恒靖 恋しくなった現場に漂う「勝負の雰囲気」
ギラギラしたものが少ない
選手時代はアジアで負けるとは思っていなかったという宮本は、現状に危機感を募らせた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
人工芝など、環境が良いところでやりすぎているのではないかと思います。例えばアジアの芝で苦労しているというところもあるかもしれないですよね。3年スパンでやっているので、試合に出られない時期があり、たくましさが足りないところもありますし、ちょっと均質な選手が育ち過ぎているというのもあります。
――宮本さんは選手時代、自分たちがアジアで負けると思っていましたか?
思っていなかったですね。アジアというか世界大会に出て、自分たちがどういうことをやれるのか、結果を出そうっていうところまで見ていましたから。アジアで勝つのは簡単ではないなという意識はありましたけれど、厳しいということは無かったです。それが大きくなっていくと危ないですよね。
――世界大会に出られない状況が続いた影響があると思いますか?
負の遺産ですよね。自分たちが悪い流れを断ち切るという思いがないと。(28年ぶりに五輪出場権を獲得した)アトランタ五輪に出た選手たちにもあったと思うんです。俺たちが歴史を変えてやるみたいな思いがね。“侍魂”じゃないですけれど、ギラギラしたものがちょっと少ないと思います。
――そういう気持ちは育てたり、教えられるものでしょうか?
育ってきた環境や社会的な背景もあると思います。それと、こういう選手を育てようという基準が先行してしまったのかなという気がしなくもないです。
「勝負の懸かった場面が恋しくなってきた」
宮本は、普段の生活にはない「勝負の懸かった場面が恋しくなってきた」と語る 【スポーツナビ】
いろいろなことをやれるように準備をしていきたいと思っています。今回アカデミーのコーチを経験して、この年代ではこういう問題もあるのかというのが、環境面も含めて見えてきました。でも自分としてはS級ライセンスを取って、チャレンジしたいという気持ちもあります。
――S級ライセンスを取ったらトップチームの監督を目指すということですか?
目指していきたいですけれど、それはオファーを頂かないと始まらない話なので。ただ、勝負の懸かった場面での緊張感やプレッシャーというのは普段の生活の中にないですから。それはやはりプロとしてやってきたなかで、なんとなく恋しくなってきたところです。
――協会などに入って行う仕組みづくりの部分にも興味があると言っていました。そちらも視野には入れていますか?
そうですね。(育成では)リーグ戦ができて、小学生年代でもリーグ戦がある。うまく整備されてきましたけれど、まだまだ変えていかないといけないところはあると思います。自分がどんな立場になったとしても、何かができるように、絶えずいろいろなことを見て学んでおきたいです。いろいろと準備しておくというのが大事なことだと思います。
(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)