高野連会長はあくまでも「調整役」 高野連・八田英二新会長に聞く(前編)
国際大会を通じた交流を
9月に行われたU−18W杯では試合を通じた国際交流の場にもなった 【Getty Images】
U−18ワールドカップ(W杯)も先日第27回大会が行われました。日本はWBSC(世界野球ソフトボール連盟)のランキングで1位です。国際的に日本の高校野球の地位向上を目指したい。日本開催ということでも多くの方々が世界に触れる機会がありました。これはすごく大きなことだと思います。視聴率も高かったと聞いています。
――U−18W杯決勝では残念ながら米国に敗れてしまいました。
選手と指導者の選出方法には問題なかったと思います。金属バットから木製バットに変わることや外国人審判特有のストライクゾーン、ボークの判定などをどう身につけていくのか、などが課題だと感じました。
国際試合が積極的に開催されれば、日本の高校生が世界に開かれて野球ができる絶好のチャンスだと思います。毎年都道府県の選抜チームが台湾など海外に行っています。積極的に野球を通して友情の輪が広がる――これを願っています。
――高校野球と国際化ということに関してはどう考えますか?
甲子園を目指すのも一つですし、積極的に野球を通した国際交流や友情の輪を広げるということを高校生に経験してほしいと思います。同じルールの下で戦える、貴重な国際交流の機会を作っていきたいし、またそれぞれの高校の先生方や地区の方々にもそういった機会を作っていってほしいと思います。
――今の高校野球は3年生にとって夏の甲子園が最終目標ですが、今回のU−18W杯が日本開催されたことで、「目標の夏の甲子園の先にこんないい舞台が用意されているのだ」という認識のきっかけになったのではないかと思うのですが?
そうですね。甲子園だけではなくまだ先がある。2年後のカナダ大会が楽しみです。五輪もそうなればいいですね。ただ五輪にアマチュア選手が何人入れるか。またアマとプロが一緒にプレーするとなれば学生野球憲章があるのでどうなるのかという問題があります。
――U−18W杯で言いますと、高卒1年目(18歳)の早生まれ選手は大学や社会人であっても出場する資格はあります。難しい問題ですが、10年後や20年後の長いスパンで考えて、早生まれの選手も候補にできる環境作りについてはどう思われますか?
出してほしいという要望が出てくれば当然考えると思います。19歳の選手に高校野球がどう対応するかということもあり、特例など(ルールを)作っております。必要性が出てきた場合、高野連としても考えると思います。
高野連は教育組織の一員である
今は5名ですが、それぞれの学校の方針もあります。「なぜ野球だけが5名だ」という意見もありますね。もっともバランスの問題もあります。悩み多いのが高校野球。一つの文化ができあがっているので、それを変えていこうというのは難しい。少しずつ改善を積み重ねていって、結局は10年くらいたったら大きな改革だったと感じられるようにつなげていきたいと思っています。
――実際、今の運営をやられている中でどう感じていますか? 改善策は?
外部の方々からもいろいろと運営に関して聞かれます。選手の健康問題、日程をもっとゆっくり取ったらとか、投手の投球制限とかですね。ただ、一つひとつの意見に納得はできるのですが、もう一つの(反対)意見ですね。バランスを取るのは本当に難しいと思います。
投球制限にしても米国では1年生は何球までとかルールがあるようですが、全てをそうしてしまうと投手が1人か2人しかいないような高校はどうしたらいいのか。全国からたくさんいい投手を集めている高校はいいのかもしれませんが、部員数が少ない高校があるので、投球制限をするとやっていけないという問題があります。
あとは日程です。2年前から休養日ができましたが、甲子園で大会を行うという前提で考えると阪神タイガースのフランチャイズの球場ですから、ゆっくりと日を取れないという問題がありますね。
こうしたらいいという意見はよく聞きますが、そうだ「これが決め手だ」ということで一つの方向に進めないという悩みがあります。
――ベンチ入り人数も歴史があります。今後、増やす可能性はあるのでしょうか?
例えば春や夏の甲子園の18名を20名に増やすと、全ての都道府県も20名かそれ以上でということになる。地方の事情はそれぞれで、すべてが対応できるかどうか。それでも今は3分の2くらいの地区が20名です。これも各都道府県の意見が上がってくると思いますので、それを吸収していくことになると思います。これは比較的採用しやすいかもしれませんね。
ただ、部員数については現在、二極化が顕著になってきています。全国大会に出てくるチームはいいが、都道府県でたとえば10名しか部員がいないと、どれだけ多くしようとしても10名。戦う前から不公平感がありますね。そのあたりは難しいです。部員数の多い高校と極端に部員数が減っている高校がある。強豪は部員数が多いからいいかもしれませんが、部員の少ない高校のことを考えると、ある程度は同じ土俵の上で競争していただきたいという思いがあります。
当然ですが、私たちはプロ養成機関ではなく、教育組織の一員であると自覚しています。教育の一環をなすものとして、試合があり、練習がある。監督やコーチ、仲間との触れ合いがあります。これらを通して人間性の涵養(かんよう)をしてほしいというのが基本精神です。それをいつも念頭に置きながら、どのような土俵整備をすればいいのかを考えていきます。
(後編は27日掲載予定)