「羽生2世」と呼び声高い15歳の逸材 山本草太を形成する“才能”と“努力”
ジャンプに関して自分は天才
両方とも僕が(長久保裕)先生に「この曲で滑りたいです」と言い、それで先生の許可が出たという感じです。SPは、母が先に「『ポエタ』がいいんじゃない」と言ってきて、それで僕も「あっ、いいね」と。FSはロシアのマキシム・コフトン選手がソチ五輪シーズンに滑っていた曲で「これは自分に合うだろうな」と思っていました。いつか使いたいなと思っていて、それを今回先生に言ったという流れです。
振付師の宮本賢二から指導を受け、表現力にも磨きをかけた 【写真:築田純/アフロスポーツ】
うわさどおりちょっと厳しかったです(笑)。僕、昨シーズンまで表現は少し苦手な部分があったんですけど、宮本先生に振り付けしてもらってからは踊るのもすごく楽しくなって、前よりだいぶ上達したかなと思います。
――演技が大人っぽくなったなと感じました。指導を受けたことで、意識的に変えた部分はありますか?
僕は踊るのがあまり得意なほうではないんですね。けっこう恥ずかしがりながら昨シーズンまではやっていたんですけど、今季からそういうのはなくなりました。決めポーズなんかをピタッと0.何秒止めるだけでだいぶ印象が違うと宮本先生が言っていたので、ジャッジの前でアピールする決めポーズだけでもしっかりやったり、そういうところは気をつけています。
――宮本さんは山本選手のことを「すごい努力家」と評価していました。昔からそういう一面はあったのですか?
僕は唯一トリプルアクセルが試合で決まらなかったくらいで、そのほかのジャンプはあんまり苦労したことがなかったんですね。ジャンプに関しては天才なのかなと自分でも思うんですけど、スピンなんかは昔は全然上手じゃなかった。体も硬くて、ドーナツスピンも全然できなかったですし、今できるようになったのは小さいころに努力したおかげかなと思います。
ランビエールから教わったこと
今年のシニア合宿は(ステファン・)ランビエールが先生だったんです。SPの『ポエタ』はランビエール先生も以前使っていたので、ちょっと見てもらっていろいろレッスンを受けました。宮本先生の振り付けも素晴らしいんですけど、それをもっとパワーアップできたような感じで、動画を見て驚きました。とてもうまくなったという感じなので、やっぱり本当にすごいなと。
――『ポエタ』はランビエールさんの代表作ですよね。具体的なアドバイスとしてはどういうものがあったのですか?
例えば、いつも振りをするときに力が入って肩が上がってしまうので、そういうのをちょっと下げたらもっと格好良く男らしさが出るよと。そういうことを言ってもらいました。
――表現の部分では、5コンポーネンツの得点を上げるために、音楽と同調して演技することが重要だと思いますが、音をとらえることについてはどれくらい意識していますか?
本当にずっとですね。スピン中も次はこの振りと曲が合うなといった感じで、練習から常に曲は意識しながらやっています。やっぱりそこが合わないと終わったあと気持ち良くないので、曲をはめるだけでだいぶ印象が変わると思うし、そういったところは今シーズンすごく意識してやっています。
――より魅せる部分に意識がいくようになったと?
そうですね。昨シーズンはやっぱりトリプルアクセルに集中しすぎて、踊りも変ではないですけどあまり上手じゃなかった。今シーズンはトリプルアクセルも決まるようになったので、表現力やスケーティングの部分をもっと伸ばすように努力しています。
羽生2世と言われるのはうれしい
「羽生2世」と呼ばれることもある山本。本人はどう思っているのか 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
羽生君が僕くらいの年から知っていて「すごいな、上手だな」と思っていたんです。小学校4年生くらいのとき、全日本選手権が大阪であって僕はフラワーボーイをやったんですよ(2009年)。そのとき羽生君は中学3年生くらいで、近くで見ていたんですけど「あぁ、すごいなぁ」と思って、そのときから好きでしたね。
――共通点があるとしたらどういう部分だと思いますか?
やっぱり羽生君もジャンプを得意にしているし、僕もジャンプは得意なので、そういうところですかね。たぶんジャンプは羽生君も天才肌だと思うし、僕もどちらかというと天才肌のほうかなと思っています。
――羽生選手と会話した中で印象に残っていることはありますか?
『ポエタ』はフラメンコじゃないですか。宮本先生に「オールバックにしなさい」と髪形も指示されたんですけど、最近までやったことがなかったんですね。オールバックなんて最初は全然セットできなくて(苦笑)。エキシビションで羽生君と一緒になって、ガラスの前で10分〜20分くらいずっとセットしていたら、羽生君が近くにきて「髪型なんてどうだっていいんだよ、スケートが上手だったら」みたいな(笑)。「確かにそうだな、スケートが良かったら格好良いよな」と思いました。
――羽生選手に憧れていることもあり、「羽生2世」と言われることもあると思うんですけど、それについてご自身では感じる部分はありますか?
羽生君は僕と一緒にされてもそんなにうれしくないですよね(笑)。僕は憧れているだけあって、「似ている」と言われるのはうれしいですけど、全然そのレベルではないですし、本当にまだまだです。ただ、そう言われる限り羽生君のレベルに到達できるように頑張りたいと思います。
(取材・文 大橋護良/スポーツナビ)