小久保ジャパンが抱える4つの課題 メンバー選考は正しかったのか?

ベースボール・タイムズ

不足する二遊間 4番は中田か中村剛か……

小久保監督はこれまで4番に中田(中央)を固定。しかし今回は中村剛を初招集し、4番を決めかねている 【Getty Images】

 では、野手陣はどうだろう。28名の選考に当たって、小久保監督は「スターティングメンバーをまず決めた」とし、「残り1人、2人のサブをどの選手にするのかで悩んだ」と明かしたが、悩んだ末に出した答えは正解だったのだろうか。

 右打ちの捕手3名を除いた内外野12名を見ると、右打ち7人、左打ち5人と左右のバランスは悪くない。だが、守備位置を見ると、二遊間を守る選手が、山田哲人(ヤクルト)、坂本勇人(巨人)、中島卓也(北海道日本ハム)の3人しかいない。川端慎吾(ヤクルト)が回ることも可能だが、ここ数年は三塁手として出場を続けており、その三塁には川端の他に松田宣浩(福岡ソフトバンク)と中村剛也(西武)と計3名を選出。中村剛を指名打者&一塁手として考えればスッキリするが、二遊間の心もとなさに変わりはない。45名ロースターからは菊池涼介、浅村栄斗、今宮健太が外れ、さらには鳥谷敬といった実力者もいた。あるいは、今季の坂本が文句なしのパフォーマンスを見せていれば印象も違っただろうか……。

 さらに打線を語る上での大きなポイントが4番打者である。小久保監督は就任以降、中田翔(日本ハム)を不動の4番として起用し、育てようとしてきた。だが、昨年11月の日米野球5試合で19打数4安打(打率2割1分1厘)1本塁打、今年3月の欧州代表戦でも2試合で7打数1安打(打率1割4分3厘)0本塁打と物足りない成績に終わった。そこで小久保監督は「(4番は)中田翔で、という思いはあるが」と言いながら、今季自身6度目の本塁打王に輝いた中村剛を初招集した。だが、その中村剛も国際大会での実績がなく、先月下旬に背中を痛めるなど体調面が気がかり。大阪桐蔭高出身の2人が相乗効果で爆発すればいいが、指揮官が自身の現役時代と重ね合わせて4番にこだわりすぎると、大きな落とし穴になるかもしれない。

経験不足の指揮官、気になる采配

 ここまで挙げた「左腕」「捕手」「二遊間」「4番」といった問題以外にも、左ひざと首を痛めている柳田悠岐(ソフトバンク)のコンディションを含め、シーズンを戦い抜いた選手たちの蓄積疲労も危惧される。そして、それ以上に鍵を握るのが、タイトルが懸かる国際大会に初めて臨む小久保監督の采配だろう。

 13年11月の台湾遠征、14年11月の日米野球、15年3月の欧州代表戦とチームを率いた小久保監督は、今年の春季キャンプなどでも各球団を精力的に視察し、選手たちともコミュニケーションを取ってきた。今回はチームの集合(11月2日)から初戦(同8日)まで1週間足らずだが、「結束という意味では心配していない」と自信を見せる。

 しかし、チームの結束力と試合中の采配はまた別もの。かつてWBCで世界一に導いた王貞治、原辰徳の両氏は、監督として多くの修羅場をくぐり抜けてきた経験を持ち合わせていた。だが、侍ジャパンで初の監督業に就いた小久保監督には、その経験がない。これまでの侍ジャパンの試合は親善試合の域を越えておらず、今回、監督として初めて臨む“負けられない戦い”の中で、1点をもぎ取る、もしくは1点を守り切るために有効な作戦を立て、それを実行することができるだろうか。

 いずれにしても、戦いは約1カ月後の11月8日から始まる。不安はあれど、期待は大きい。その不安をかき消し、課題を乗り越えていくたびに、小久保ジャパンは世界王者へと近づくだろう。その歩みを、注意深く見届けたい。

(文・三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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