前半戦首位から最下位転落…… DeNAに足りなかった勝者の精神

ベースボール・タイムズ

前半戦首位ターンも来季につながるか疑問

98年日本一の立役者の一人、駒田氏は若手選手にアドバイスできるベテランの不在も低迷の要因と見ている 【写真は共同】

 現役引退後はコーチの経験もある駒田氏。中畑監督とは巨人時代の先輩であり、チームメイトでもある。順位的には6位、5位、5位、6位という4年間だったが、「よく頑張った。一生懸命にチームの体質を変えようとした」と労う。だが、「どうしても限界があった」とも振り返る。

「監督がどんなに厳しく指導しても、その厳しさについて行く土壌がチームにないといけない。監督やコーチが厳しくすると、選手たちが『嫌だな』と思うのは当然です。でも、そこで選手が『ちょっとあのコーチ厳しいんですよ』と愚痴って、それに対してフロントが『そうか、選手たちから不満が出ているなら代えるか』となってしまってはいけない。それを繰り返していては、絶対にチームは強くならない。有望な若手を2軍でじっくりと鍛え上げるということも必要だと思います。育成段階から長期プランをしっかりと立てて、強くなるための土壌を作っていかないといけない」

 今季の前半戦首位ターンは、その土壌を作る上での養分になったのではないか。98年の日本一の前年に2位となった時のような自信を、選手たちはつかんだのではないだろうか。しかし、その意見も駒田氏はうのみにはしない。

「確かに前半戦、首位ターンというのは称賛されるべきですけど、それが自信になったかと言われれば疑問です。選手たちが本当に自信をつかんでいたのなら、最低でもCS(クライマックスシリーズ)には行っていたはずです。日本一の前年の97年は優勝できませんでしたけど、いわゆる“天王山”という戦いを経験した。それが大きかった。そういう意味で今季は“天王山”“負けられない一戦”というのを経験できたのかどうか。優勝争いの中での混戦を勝ち抜くための強さというものは、まだ今のチームにはない。それを身につけるために、まずは“負けられない一戦”を経験しないといけない」

パフォーマーは去り“結果”の追求へ

 現時点で新監督が誰になるかは分からない。だが、誰になろうとも、選手たちの顔触れが大きく変わるわけではないだろう。そこでチーム強化のために駒田氏が提案するのが、「レギュラーの固定化」だ。

「野手ならレギュラーポジション、投手ならローテーション投手を決めてしまうということも大事になる。まずはチーム内の序列を決める。そこで選手が自分たちで『頑張ったらチャンスがある』と思うのか、『頑張っても無駄』なのかがハッキリする。その中で『俺がレギュラーを奪い取るんだ!』とアグレッシブにチャレンジできる選手が、本当の勝負所で活躍できる。言い方を悪くすれば、今季のベイスターズは、選手たちがそこまで頑張らなくてもチャンスをもらえた」

 そもそも絶対的なレギュラーがいなかったことが大きな要因だろうが、その一方で筒香を我慢して起用し続けたように「意図的にレギュラーを作り上げる」ということも必要だろう。その一つの方法論として、駒田氏は「年功序列システム」の有効性を訴える。

「選手たちにもっと苦労させるために、年功序列のようなシステムも必要だと思います。年功序列というと古臭いように感じるかもしれませんが、チームのために長年、一生懸命頑張ってきてくれた選手をベンチの中に置くということはチームにとって必要です。そういう選手は、監督やコーチたちが何も言わなくても、若い選手にアドバイスをしてくれる。チームの重鎮と、昨日入ってきたばかりの選手を同じタライに入れてガラガラかき混ぜて、『調子が良いから』という理由だけで起用していくと、元々チームにいた選手たちは周囲にアドバイスをしなくなる。自分の立場が危うくなるわけですからね。そうなってしまうと、チームが『優勝するんだ』という雰囲気にはならない」

 世代交代はチームが優勝を目指す中で自然と行われるべきであり、無理やり敢行されるべきものではない。チームが強くなるためには、チーム全体を俯瞰できるベテランが必要になる。そうやって伝統は受け継がれていく。では、現在のDeNAはどうなのだろうか。

「そういうベテランたちが外に出て行ってしまったし、若い時に厳しく育てられていないからチーム全体を見てアドバイスできるようなベテランに育っていない。そこは問題だと思います。若い選手たちが自分のやりたいようにやっているだけでは、調子の良い時は勝てるけど、悪くなるとまったく勝てなくなる」

 営業面では大きな成果を得た中畑ベイスターズだが、チームは4年連続のBクラスだった。
「営業面では満足だったかもしれませんけど、現場は勝ちにこだわらないといけない」

 新監督の下で新たなスタートを切ることになる“新生”ベイスターズ。一流のパフォーマーであった指揮官は去った。今後は、これまで以上の“結果”でファンを集めなくてはならない。中畑体制の4年間を無駄にしないためにも、ここからが本当の勝負になる。

(文・三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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