スピードの頂点へいざ武豊ベルカント 充実の夏、その舞台裏を直撃

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デビュー前から見せていた天性のスピード

1000m電撃戦のアイビスSDで復活V、そのスピードはデビュー前から群を抜いていた 【netkeiba.com】

 サマースプリントシリーズのチャンピオンに輝いたことで再認識されたが、振り返るとデビュー当初からベルカントの豊かなスピードは注目を集めていた。

 角田厩舎で調教担当の川島正行調教助手はこう語る。(※フリオーソなどを管理した船橋の伯楽、故・川島正行調教師と同姓同名だが、縁故はない)

「2歳で入厩し最初に跨った時、坂路でいきなりハミをとって1F15秒を出したのでビックリしました。抑えきることができず、先生から『いくらなんでも速すぎだろ』と怒られたんです。
 その後のゲート試験では、同時に受験した他の3頭はみんな騎手が騎乗しているのに、ベルカントだけが助手の僕でした。それでも、馬なりで持ったままでの合格だったんです」

 2歳の秋にファンタジーSを勝利し、厩舎に初重賞制覇をもたらした。さらに、3歳春にはフィリーズRで重賞2勝目を飾った。その後、得意とは言えない左回りの新潟でのスプリンターズSで、0.1秒差の5着に健闘するも、1年4か月もの間勝ち星から遠ざかってしまう。

牡馬にも引けを取らないスピードとパワー

角田調教師は年末の香港も視野に入れている 【netkeiba.com】

「このままでは、この馬のキャリアがなくなってしまう。違うかたちで変えていかないと」、そんな思いを抱いた角田師は、あるチャレンジをした。

「放牧先の大山ヒルズの斎藤GMと相談し、『可愛がってもしょうがないので、ちょっといじめてください』とオーダーを出したんです。神経がピリピリと研ぎ澄まされた状態にしていこうと。本当に素晴らしい状態で戻ってきてくれました」

 帰厩したのは5月下旬。その後の調整過程を川島助手は、こう振り返る。

「先生から『甘やかすな』という指示だったので、結構ハードに調教をやっていたんですが、それでいてアイビスSDはプラス12kg。この数字はいい傾向だったんでしょう」

 中2週で挑んだ北九州記念もプラス2kg。「輸送減りしなくなりました。本当に筋肉だけなのかも」、角田師はパワーアップぶりを数字でも感じ取った。

 期待通り北九州記念も勝利で収めると、ベルカントは短期放牧へ出た。栗東に帰ってきたのは約1か月前。スプリンターズSの1週前追い切りでは、坂路で右ラチ沿い一杯を勢いよく駆け上がってきた。ここ最近ベルカントにとっては定番となっている姿だ。

「その方が、修正しなくていいのでね。小倉2歳Sの追い切りに私が乗った時もそうだったんですが、元々右にもたれる癖があったんです。口向きが悪いわけではないんですが」

 騎手として輝かしい成績を残してきた角田師は、現在も自ら馬に跨る。騎手としての初重賞(エプソムC・サマンサトウショウ)と初GI制覇(桜花賞・シスタートウショウ)はともにトウショウ産業の愛馬だったが、先日、そのトウショウ牧場が閉場されるニュースが報じられた。

「デビュー当初からお世話になっていたので残念ですが、まだ馬主は続けられるということだったので、今預かっている現役の馬とかで大きいところを勝って、恩返しをしたいですね」

 このスプリンターズSは、ベルカントの主戦・武豊騎手にとってJRA重賞通算300勝の節目となる可能性もある。

「ベルカントは牡馬にも引けを取らないスピードとパワーがあります。状態の良さを生かして、この馬にGIの勲章をとらせてあげたいですね。それに、結果次第では年末の香港に、という話もあります。それも視野に入れながら、まずはスプリンターズSでいい結果を残したいですね」

(文中敬称略)

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