エディージャパン、歴史的勝利の理由 元日本代表・藤井淳が解説
最高のメンタルで臨んだ日本代表
五郎丸(左)のトライに喜ぶ日本代表。南アフリカを破る快挙を成し遂げた 【Photo by Yuka SHIGA】
興奮して、なんだかよくわからないですが……。泣いちゃいますね。日本代表の選手、スタッフを心から尊敬しますし、歴史的な勝利をうれしく思います。
――世界3位の南アフリカに勝てた要因は?
一番は最高のメンタルで臨めたことだと思います。それぞれの表情やプレーからも充実していることが伝わってきました。
日本はW杯で24年間勝てなくて、負の歴史となっていましたが、エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)がそれを変えました。エディーが選手にマインドを変えることを求めて、選手が応えた結果だと思います。
――藤井選手はエディー体制1年目に日本代表でプレーしています。
3年前、ジャパンに入って最初に言われたのが「W杯でベスト8に入る」という明確なゴールでした。最初に聞いた時はさすがに難しいのでは……と感じましたが、エディーは「君たちはできる」とその根拠を説明してくれました。そこで自分たちの強みと、伸ばしていくところを提示されて、選手は信じてついていきました。
何よりエディーの自信にあふれた言葉は説得力があって、心に響きました。
過去になかったスペシャルプレーでトライを奪う
後半終了間際、途中出場のWTBヘスケスが逆転トライを決めた 【Photo by Yuka SHIGA】
全て良かったんですが、まずはディフェンスが良かったです。個々のタックルミスから2つトライを奪われましたが、全体的に良く止めていました。
南アフリカの選手は大きいので(FWの平均身長192.5センチ、体重115キロ)、日本の低いタックルを嫌がっていました。それを80分間、徹底できたことが勝利につながったと思います。
――攻撃面ではBKの選手もモールに入ってトライを奪ったり、後半28分の五郎丸選手のトライのようなスペシャルプレーもありました。
3年前の日本代表ではスペシャルプレーは全くありませんでしたし、エディージャパンになってから、ずっと確実性の高いプレーばかりで戦っていました。
ただ、このW杯という舞台で南アフリカという強敵と戦うことで、たとえ失敗してもギャンブルが必要だと思っていました。選手が勇気を持って実行して、それがハマりましたね。
五郎丸のトライのサインプレーはラインアウトからでした。CTB立川とSO小野の場所を入れ替えていて、先に受けた立川からおとりの選手の背中を通して小野へ、その内側にWTB松島が走り込んで抜けたところでトライは決定的でした。
おそらく、エディーが南アフリカのディフェンスの傾向を分析して、抜ける可能性が高いプレーを選択したんだと思います。あの状況で難しいパスを連続で成功させたBKの選手たちの技術は正確でしたし、ラインアウトをきれいに捕ったFWの精度の高さも素晴らしかったです。