41歳イチローに高まる3000安打の期待 打撃低迷も来季メジャー契約は有力

杉浦大介

3000安打は盛大なファンファーレの下で

打率、出塁率ともに低迷が続くイチロー 【Getty Images】

 ただ、たとえそうだとしても、来季もイチローの獲得を望むチームは確実に現れるだろう。もはや“ベンチの切り札”と呼べるレベルではなく、現実的に優勝を目指す強豪への移籍は難しいかもしれない。ただ、守備力、走力に目をつけるチームはあるはずで、ケガの少ない“40代の鉄人”が今季同様の1年200万ドル(約2億4000万円)程度の契約で手に入るのなら悪くない。

 何より、来季は大記録達成の舞台になるという夢がある。今季ここまでに88本のヒットを積み重ね、メジャーでの通算3000本にあと68安打に迫ってきた。“日米通算”の注釈がつかない正真正銘のマイルストーンは、来夏頃に盛大なファンファーレの下で達成されることになるはずだ。

「シーズン終了後まで待つが、残留を望むことになるだろう」

 15日には、マーリンズのベースボール・オペレーション社長、マイケル・ヒルがそう語ったと『ニューヨークポスト』紙が伝えた。

 1993年誕生という歴史のないマーリンズのような不人気チームにとって、全米からの注目を集めるイチローの記録達成の瞬間に居合わせる可能性は魅力的に違いない。たとえ3000本到達がアウェーであっても、カウントダウンの段階で観客動員やグッズ売り上げアップが望める。

 もちろん控えメジャーリーガーとして最低限の仕事ができることが最低条件だが、今のイチローには“3000”という付加価値も付いてくる。マーリンズ残留にしても、移籍になるとしても、契約成立は2月あたりまでずれ込むことが有力。それでも、最終的にはどこかのチームがメジャー契約を与えるのではないか。

若手選手からも憧れの存在に

 メッツとのニューヨークでの今季最後の3連戦中も、少なからずのファンがイチローの姿を目にして歓喜する姿が見られた。打撃練習中には、フィールドでメッツの若手選手たちと言葉をかわすシーンもあった。

「少しだけど話せて良かった。面白い人なんだね」

 ドミニカ共和国出身のメッツのクローザー、25歳のヘウリス・ファミリアはうれしそうにそう語っていた。殿堂入り確実の外野手は、両チームのロースターの中で別格の名前。一部のラティーノたちにとっても憧れの存在なのだ。

 輝かしいキャリアも終盤に迫っていることは間違いなく、イチローにあと何年が残されているかは分からない。あるいは来年が最後となるかもしれない。

 しかし、少なくとも来年の大記録達成の前後までは、ニューヨークで見られたような歓迎ムードが続くはず。そしてそれは、これまで常に最善の準備を怠らず、驚嘆すべき数字を残してきた背番号51が、メジャー15年の中で勝ち取ったものであるに違いない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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