注目のパラスイマー、それぞれの戦い すでに照準は1年後のリオへ

荒木美晴/MA SPORTS

切磋琢磨しあう女子10代スイマー

女子は10代選手が台頭。池愛里も2年前のこの大会で活躍し、着実に経験を重ねている 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 一方、女子では10代の選手が台頭。高校2年の池愛里(個人、S10)は、身長178センチの長い手足を生かした大きなストロークが武器だ。2年前のこの大会で、中学3年生ながら3種目を制して一躍ホープに躍り出た池。それ以降も破竹の勢いで日本記録を塗り替え、日本代表として多くの国際大会に出場し、着実に経験を重ねている。障害のクラスは違うが、5日の400メートル自由形でアジア新記録を出して会場を沸かせた高校3年の鎌田美希(大阪シーホース、S8)や、大学1年の一ノ瀬メイ(近畿大学、S9)ら同世代の成長と活躍に刺激を受ける。

 池はジャパンパラで、50メートルと400メートル自由形、100メートル背泳ぎ、100メートルバタフライで優勝したが、国内には同じクラスで泳ぐ選手が少なく、自分の真の実力は国際大会で把握することになる。絶好の機会となった世界選手権では得意の50メートル自由形で予選敗退しており、「今はまだ世界で戦えない」と話す。

 ジャパンパラから、今まで敬遠していた専門ではない100メートルバタフライにも出場するようにした。「苦手種目でもしっかりレースに向き合える精神力というか、心を鍛えたいから」と、その理由を語る。9月12日に17歳の誕生日を迎えたばかりの若きスイマーは、自らにプレッシャーをかけ、世界を狙う。

新鋭の登場、そしてベテランの復帰

女子100メートル背泳ぎでは岡部歩乃佳(中央)が一ノ瀬メイ(左)に勝利。9月末の世界大会代表にも選ばれた 【スポーツナビ】

 ジャパンパラの100メートル背泳ぎ(S9)で、日本記録保持者の一ノ瀬を破り優勝したのは、中学3年の岡部歩乃佳(伊予かんえい会)だ。ジャパンパラは小学5年から出場し、今年で5回目。“憧れ”という一ノ瀬に初めて勝利したことについて、「まさか勝てるとは思っていなかったので本当に嬉しい。レース後はメイちゃんに、おめでとうと声をかけてもらった。コーチからはまだタイムは上がると言われているので、体力をつけて、一日に何レースもこなせる選手になりたい」と笑顔を見せた。
 9月末にロシア・ソチで開催されるIWAS世界大会の代表に選ばれている。「国際大会も、外国に行くのも初めて」という挑戦になるが、その伸び盛りの潜在能力に大きな注目が集まりそうだ。

4大会連続でパラリンピックに出場している成田真由美がジャパンパラで7年ぶりに実戦復帰 【スポーツナビ】

 また、アトランタ、シドニー、アテネ、北京と過去4大会連続でパラリンピックに出場し、金メダル15個を含む計20個のメダルを獲得した成田真由美(横浜サクラ)がジャパンパラで7年ぶりに実戦復帰。出場した100メートル平泳ぎ(SB4)、100メートル自由形(S5)ともリオの参加標準記録を突破するなど、センセーショナルな活躍で話題をさらった。

 リオまで1年。ジャパンパラで得た収穫と課題を胸に、これからは選手それぞれの調整を重ねて本番へと照準をあわせていく。

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著者プロフィール

1998年の長野パラリンピック観戦を機に、パラスポーツの取材を開始。より多くの人に魅力を伝えるべく、国内外の大会に足を運び、スポーツ雑誌やWebサイトに寄稿している。パラリンピックはシドニー大会から東京大会まで、夏季・冬季をあわせて11大会を取材。パラスポーツの報道を専門に行う一般社団法人MA SPORTSの代表を務める。

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