仙台育英、甲子園準Vバッテリーの矜持 佐藤世那と郡司裕也の春夏秋冬

週刊ベースボールONLINE

郡司の叱咤に佐藤は涙と感謝

扇の要として佐藤、そして日本の投手陣を支えた郡司 【写真=BBM】

 衝突もした。冬を前に佐藤は右ヒジを故障。投げられない日が続いたが、チームは春のセンバツへ向けて、走り込みなど体力強化も行っていた。

「(仙台)育英は指導者が練習を見ていないことも多い。だから、手を抜こうと思えば、楽もできる。アイツは手を抜いていたので、全員の前で注意したんです」(郡司)

  叱咤(しった)を受けた佐藤は翌日、涙を流し「ゴメン。しっかりやるから」と、郡司のもとを訪れたという。だが、決して楽をしようとしたわけではない。故障中の佐藤はもがいていた。「投げられなくて、何をして良いのか分からなかったんです」。投手の生命線とも言えるヒジ。不安が生じて当然だ。そんな不安を吹き飛ばしてくれた郡司に「言ってもらえて、ありがたかった」と感謝している。

 ヒジの故障も癒え、挑んだセンバツは2回戦敗退。夏へ向け、再スタートを切った矢先「2度目のどん底」が訪れた。春の東北大会2回戦で4回2/3を投げて5失点。先発登板した今夏の宮城県大会、準決勝では一死も奪えず降板。「調子が悪いとズルズル行ってしまうんです」(郡司)。この失敗も、さらに佐藤を成長させた。

佐藤はプロ志望、郡司は大学進学

 W杯スーパーラウンドのカナダ戦。先発の佐藤は試合前のブルペンから、ボールがバラついていた。試合に入っても、2回に四球でピンチを招くと暴投で先制点を献上。

 その裏に同点に追いつくと、以降は粘りの投球を披露した。「今までだったらズルズル行っていた。この1年を経て投球術も学んだし、メンタルも強くなった。見ていて本当に頼もしくなった」(郡司)。 悲願の世界一へ。バッテリーは米国との再戦となった決勝も託された。

 しかし、想定外の出来事が起こる。雨で開始が37分遅れて18時37分開始に。その知らせを聞いたのは15分前のことだった。だが、準備不足も感じさせず、序盤2回を無失点に。しかし、3回に1死二塁から投手ゴロを三塁へ暴投で先制を許すと、2死二塁からは、打ち取った打球も右前へポトリ。2点のリードを許して4回でマウンドを降りた。結局、1対2で敗戦。それでも、2人に涙はなかった。

 佐藤が「楽しめました。甲子園はああいう終わり方でしたが、この大会は本当に楽しめました」と言えば、郡司は「日本一を逃して、世界一も逃した。まだ何かが足りないんだと思います。これから、その『何か』を見つけたい」と前を向いた。 プロ志望の佐藤と、大学進学の郡司。互いの進路は異なるが、この1年間で得た経験が今後の野球人生に必ず生きてくる。

2/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント