再び「ベースボール」に屈した高校野球 必要な球界全体での後押し
108名から20名を絞り込んだ米国
決勝で勝利した米国の選手たちをみつめるU−18代表の選手たち 【写真は共同】
一方、初戦となった8月28日のブラジル戦から前日のキューバ戦まで8連勝を飾り、得点80、失点3と圧倒的な強さを誇ってきた侍ジャパンU−18代表だが、決勝では1点届かずに敗れた。
スコアボードを見れば、天国と地獄を分けたのはわずか1点。しかし日本代表は、これを僅差の敗戦と片付けてはいけない。またしても初優勝を逃した今大会の結末は、「ベースボール」対「高校野球」の戦いに敗れたと言えるのではないだろうか。
そう感じるのは9月4日のキューバ戦後、米国代表のグレン・セッチーニ監督からチームづくりの経緯について聞いていたからだ。
「6月15日にわれわれのプロセスは始まっている。108名の選手が最初の候補に挙がり、1週間かけて試合を行いながら40人に絞った。そしてもう1週間かけて、28名まで絞り込んでいる。その後、7月4日からカリフォルニアで3日間のトライアウトを行い、20人を決めた。そのメンバーで2日間合宿し、台湾で3日間練習した。たった5日間しか準備期間がなく、来日しているんだ」
セッチーニ監督は普段、ルイジアナ州にあるバルブ高校の野球部を率いている。そんな指揮官が3連覇を飾るにふさわしいメンバーを絞り込むことができたのは、“挙国一致”のサポート体制があったからこそだった。
「108名の選手を選ぶ際、最初にプロのスカウトから推薦が来るんだ。メジャーでドラフトにかかるアマチュアレベルを見ている、プロのスカウトたちからだね。米国代表のディレクターを務めているショーン・コーツがプロのスカウトたちとたくさん話し、選手たちを自ら見て選んでいく。ショーンは大学のコーチでもあるから、コネクションをたくさん持っているんだ。だからプロのスカウトたちは彼のことを信頼し、情報を教えてくれる。そうやって選ばれたのが、今回日本に来ている20人だ。彼らのほとんどが、ドラフトにかかるだろう」
高校、大学、そしてメジャーリーグへと至るプロセスのなか、「ベースボール」の底力を見せたのが今回の米国代表だった。国際大会での経験は選手としてステップアップするための財産になるから、大学とプロも協力する。「ベースボール」をプレーする米国は縦のつながりを持ち、高校生たちが栄冠をつかんでみせたのだ。
日本になかった「ふるいにかける場」
カナダ代表では今年6月のドラフト会議でマーリンズから1位指名され、すでにルーキーリーグで活躍しているジョシュ・ネイラーが来日して今大会の本塁打王に輝いた。マーリンズは国際経験を積ませるメリットを考えて、派遣に応じているのだろう。日本もプロの2軍選手を加入させれば、当人だけでなく、ともにプレーする高校生にとってもいい影響があるはずだ。
しかし、横のつながりさえ希薄なのが現状である。今大会で西谷浩一監督(大阪桐蔭)の参謀役を務めた仲井宗基コーチ(八戸学院光星監督)に米国の選考方法を伝えると、こうこぼした。
「108名を選んで、それをふるいにかけていくわけじゃないですか。(日本には)ふるいにかける場がありません。たとえばセンバツが終わった後に1次選考選手が出るじゃないですか。そこで1回、代表監督が決まって直前合宿を3日でもやれれば本当の動きを観察できるし、(メンバー選考も)また違ってくるかなと思いますね。監督がサインをふるうわけですから、監督がやりたい野球をやれる選手を集めないといけない」
1次候補選手の30名が発表されたのは4月2日。そして8月20日、本大会に出場する20名が発表された。その間、選考会などが行われたわけでもない。本気で勝つ気があるなら、仲井コーチの言うようにふるいにかける場を設けるべきではないだろうか。