バルサ、レアルが苦しんだリーガ開幕節 これまでとはひと味違ったシーズンに!?

物足りなかったアトレティコ

アトレティコはグリエズマンのゴールで勝利を収めたが、物足りない内容に終始した 【写真:ロイター/アフロ】

 ディエゴ・シメオネ率いるアトレティコ・マドリーも開幕戦の出来が注目されていたが、昇格組ラスパルマスをホームに迎えた一戦(1−0)では、レアル・マドリーやバルセロナを上回る大型補強を敢行した効果を見てとることができなかった。

 ジャクソン・マルティネス、ルシアーノ・ビエットら優秀なストライカーを獲得したにもかかわらず、アトレティコの攻撃はほぼ全て期限付き移籍先のポルトから復帰したオリベル・トーレスの両足に委ねられていた。もし今後もこのような状況が続くのであれば、昨季のアルダやコケがそうだったように、若いカンテラーノは過度の責任を負いながらのプレーを強いられることになるだろう。

 フィリペ・ルイスの復帰とフアンフランの残留により、両サイドバックの攻め上がりは大きな武器となるが、今季のアトレティコにはそれ以上のものが期待されている。後半に投入されたアンヘル・コレアは相手の守備網を切り裂くドリブルで攻撃のアクセントとなっていたが、それもシメオネが抱える豊富な戦力、そして対戦相手のレベルを考えれば物足りなかったと言わざるを得ない。

“中流階級”が躍進する可能性

バレンシアは引き分けたものの、今後に期待を抱かせるプレーを見せた 【Getty Images】

 マラガvs.セビージャ、ラージョ・バジェカーノvs.バレンシアの2試合は共にスコアレスドローに終わったが、その内容は対照的だった。共に質の高い選手をそろえながら退屈な90分間に終始した前者とは裏腹に、後者は両チームとも多くのチャンスを作り出す良質のスペクタクルを提供しながら、ゴールだけが欠けていたからだ。

 ロースコアの試合が目立った開幕戦の結果は、過去最高にレベルの拮抗したシーズンとなることを示しているのだろうか。少なくとも専門家たちは、アトレティコ、セビージャ、バレンシア、ビルバオ、ビジャレアルら“中流階級”の第2勢力が2つのメガクラブに近づくシーズンとなる可能性を主張している。

 その理由の1つは、ようやく大半のクラブが経済的に健全な経営を行えるようになってきたことだ。20チーム中15チームが選手の売買で黒字を保ち、プロリーグ機構(LFP)による一括管理が始まったことでテレビ放映権収入の分配バランスも改善された。なお現在、リーガ・エスパニョーラの放映権はモンゴルとグリーンランドを除く世界中の国で売れている。

 また今後リーガはこれまで何かと模範にしてきた英プレミアリーグをトップの座から引きずり下ろすべく、スペイン独自の伝統や文化の面まで変化を受け入れる姿勢を見せ始めている。金曜や月曜の試合開催、アジアなど他地域の放送時間を意識した昼キックオフなどの試みに続き、今季はこれまでスペインでは考えられなかった12月末のリーグ戦開催が決定されたばかりだ。

 まだ判断するには時期尚早である。それでもメッシとC・ロナウドがそろって無得点で開幕戦を終えた今季は、これまでとはひと味異なるリーガとなるかもしれない。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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