データが示したJ1必勝法 浮かび上がる今季のリーグ傾向とこれから
試合の鍵は途中出場選手がにぎる
36→58と上昇し、14年前期と15年ファーストステージの増加率は161%と、際立って伸びた。
時間帯別のゴール数も、それを裏付ける。
【データおよび画像提供:データスタジアム】
この途中出場ゴール数をチーム別に見ると、1位は6ゴールで、ベガルタ仙台、鹿島、浦和、広島が並ぶ。仙台はウィルソンと奥埜博亮が2ゴールずつ、鹿島は遠藤康が2ゴール、浦和はズラタン、興梠、梅崎が2ゴールずつ、広島は浅野拓磨が3ゴール、野津田が2ゴール。ざっと名前を見ても、日本代表候補など、実力派ばかりだ。攻撃の層が厚いチームが、上位にきている。
全体としても、途中出場でFWを投入する回数が増えた。14年前期が261回、後期は313回、15年ファーストステージは326回。さらにその出場時間も、4838分→5546分→6595分と伸び、相対的にMFの途中出場時間が減った。15年は3バックを採用するチームが増え、湘南、ヴァンフォーレ甲府、名古屋グランパス、ヴィッセル神戸、モンテディオ山形など、FWの登録人数そのものが増えたことも、ひとつの要因だ。
縦の速さが格段に増した浦和と広島
【データおよび画像提供:データスタジアム】
特に目立つのが、浦和と広島だ。監督や選手が「縦の速さの向上」を口々に語っている浦和では、27.0秒→28.0秒→16.6秒と短くなり、ゴール数も3→8→15と増加。同じく広島も36.6秒→30.0秒→17.6秒と短くなり、ゴール数は9→6→11と変動した。15年は飛躍的に、縦に速い攻撃が増えたことが分かる。
この戦術的な変化と、フレッシュなFWを途中出場させる時間が伸びたことは、『いかに縦の速さを生み出すか』という点で、密接につながっている。そして、実際にゴール数も増えた。
以降のセカンドステージは、このような傾向に対し、各クラブがどう立ち向かうかもキーポイントだ。
例えば浦和のファーストステージは、途中出場選手がリーグトップの6ゴールを挙げたが、逆に対戦チームの途中出場選手に食らったゴールも、5失点ある。総失点17に対して29.4%の5失点。この割合は、リーグで最も多い。
上位チームは先制する試合が多いため、前がかりに来る相手の途中出場選手に食らう失点がある程度増えるのはやむを得ない。FC東京や広島も4失点している。しかし、浦和の場合は、途中出場選手に打たれたシュートが17本と少ない割に、そのうち9本のシュートを枠内に打たれ、5失点している。被枠内率52.9%、被決定率29.4%とかなり高い。
これは相手のフレッシュな途中出場選手に、回数は少なくとも、ビッグチャンスを作られる傾向が強いということだ。セカンドステージ3節の広島戦では、途中出場の浅野に試合をひっくり返されたが、すでにその傾向は、ファーストステージから見られていた。後半のリスクマネジメント。浦和のセカンドステージは、この問題と付き合っていく必要がある。
15年J1のキーワードが、『縦の速さをめぐる攻防』であることは間違いない。
しかし、このように時代が動いた要因を、縦の速さを標榜する新しい日本代表監督になぞらえて、『ハリル効果』と言い切ることには疑問を呈したい。なぜなら、縦の速さとともに、3バックのチームが急増したことについて、『ハリル効果』はまったくの無関係だからだ。逆に、「4バックのサイドバックを探しづらくなった」と、ハリルホジッチ本人が頭を抱えている。
ひとりの指揮官が影響を及ぼしたと考えるよりも、むしろ、より大きなトレンド、例えば昨年のブラジルワールドカップにおける、オランダ、コスタリカ、チリ、メキシコなどの影響を、Jリーグも強く受けたのではないか。そう考えると、3バックが増えたこととも整合性がある。
そして、そのようなチーム志向と、ハリルホジッチが個人の意識に強く働きかけたことが相乗効果となり、15年J1のトレンドが生まれた。個人的には、そう捉えている。付け加えるなら、FWの途中出場が増えたこと、そして後半のゴール数が増えたことは、J1が2ステージ制になり、半期決戦で勝ち点3を狙う傾向が出たとも考えられる。
この大きなトレンドの中で、自分の応援するクラブはどこに立っているのか。そして、どう立ち向かっていくのか。木を見るが、森も見る。残りのセカンドステージは、そのような視点を持つと、より深く楽しめるのではないか。
(文:清水英斗、グラフィックデザイン:澤田洋佑)