タレント性で劣る東福岡の例年と違う武器 総体連覇も選手権に向けより厳しい競争へ
下にいる部員が上を目指す東福岡
昨年のチームよりもタレント性では劣るが、そのコンプレックスを力に変え、東福岡は下克上を果たした 【写真は共同】
選手発掘、リクルーティングにかけるパワーも突出して高い。今年で言えば、2年生MF藤川虎太朗のような中学年代の有名どころも引っ張ってくるが、同時に未知の雑草の発見にも余念がない。決勝戦や、山場だった四日市中央工の2回戦(4−1)など要所で貴重なゴールを決めたMF三宅海斗は岡山県倉敷市内の中学校チームでプレーしていた選手。「チームは県のベスト16くらい」だった男は、東福岡からのオファーに心底驚いたというが、この網の広さこそが強さの秘密であることは想像に難くない。こうして集めてきたエリートと雑草を競わせて、選び抜かれた11人が全国大会のピッチで戦うのである。
例年よりもタレント性で劣る世代
ハードワークと団結力という例年とはちょっと違った武器を前面に出しつつ、しかしU−17日本代表GK脇野敦至や前述の藤川のような特別なタレントも要所に散りばめ、結果として好バランスのチームに仕上がった。下級生が多く試合に出ていることもあって、伸びしろも感じさせるチーム。「去年は夏に優勝して難しくなったけれど、今年は違う」と主将のMF中村健人は言い、森重監督は優勝直後「もう遠征をしている別のチームがある。彼らはここにいる17人を抜くつもりでやってくれるはず」と競争の激化を明言。その競争がうまく作用すれば、より面白いチームに仕上がってきそうだ。
選手権に向けた激しく残酷な競争
ここから選手権までおおよそ4カ月半。総体出場55校はまず各地のリーグ戦を戦いつつ、秋の高校選手権予選予選に備えることになる。選手権出場校は48なので、単純に考えても7校が落ちることになる。市立船橋が出る千葉県予選のように、特別な激戦区もある。初の4強で大会を沸かせた関東第一の小野貴裕監督が「絶対に甘くない」「厳しい戦いになる」といった言葉を繰り返し、気を引き締め直していたのは何とも印象的だった。
チーム内での競争と、チーム間での競争。この激しく、ときに残酷ですらある戦いが、日本の高校サッカーをより強く、より逞しいものにしていることは間違いない。