日本ハム近藤の目標は“勝てる捕手” パ打率3位の強打は魅力も送球に課題
捕手にこだわり「可能性を広げる」
送球には難があるものの、投手陣の信頼は厚く4月19日には大谷を今季初完封に導いた 【写真は共同】
ましてや、日本ハムとしては小笠原という成功例がある。当然、同じ路線での育成法も考えられる状況にあり、プロ2年目の13年には右翼手として12試合、昨季は三塁手として67試合に先発出場した。しかし、栗山監督は「基本はキャッチャー」と、今季開幕前から「捕手・近藤」の考えを貫いている。新外国人の三塁手・レアードが極度の打撃不振に陥っていた状況でも、指揮官は「近藤の三塁起用は、今の時点ではない」と「サード・近藤」の声を打ち消し、三塁手としての練習を行わせていない。
他球団から見れば、昨季サードで一定の成果を残した選手を再び捕手として起用するのは「もったいない」と思うかもしれない。イップス気味の現状を考えると、なおさらだろう。しかし、固定概念にとらわれないのが日本ハムの育成方針。ましてや、まだ22歳。若くして捕手失格の烙印を押すことは、栗山監督の考える「可能性を広げる」という言葉に反している。本人も捕手としてのこだわりを見せている以上、指揮官は「捕手・近藤」の可能性を信じて背中を押すことに努めている。
目標は阿部のような“勝てる捕手”
「キャッチャーは守備も大事ですし、勝てるキャッチャーにならないといけない。まずは投手が投げやすい環境を作り、バッティングでも投手を楽にさせることが大事。打てて、勝てるキャッチャ―を目指していきたい」
将来の目標として描く“勝てる捕手”。近年において、その代表格には巨人の阿部慎之助が挙げられる。2012年の日本シリーズ第2戦。けん制球のサインを見落とした澤村拓一に、阿部がマウンドまで駆け寄り、頭をたたいて喝を入れた。その光景を、プロ1年目の近藤はベンチから見つめていた。勝てるキャッチャーとは、打って、守って、そして時には厳しくチームメイトに接するリーダシップも必要になる。その阿部でさえ、プロ入り当初は捕手としての能力不足を指摘され、その弱点を実戦の中で克服し、学び、成長してきたのだ。
現状、自身が目指す「打てて、勝てるキャッチャー」への課題は多いが、その可能性は確かに漂わせている。そして球団が「可能性を広げる」との方針を示している以上、今後どのような道を進むのかは本人の努力次第ということになる。ひとつ言えることは、その「可能性」を見限るのは、まだ早く、もったいないということ。誰よりも練習熱心である若武者の挑戦を、もう少し見守りたい。
(文:鈴木将倫/ベースボール・タイムズ)