ホークス“休みの備学”で死角ナシ 首位独走を支える工藤采配の妙

ベースボール・タイムズ

休みが生み出す競争心と向上心

5日の日本ハム戦、代打・本多(中央)のサヨナラ打で勝利を収め、球団最速のマジックが点灯。控え選手の層も厚く、チーム内競争は激しい 【写真は共同】

 工藤監督は、リリーフ陣に限らず、故障明けの本多雄一を何度かスタメンから外すなど、すでに野手陣の体調管理にも着手している。

 優勝マジックが点灯した5日の日本ハム戦で、試合に決着をつけたのはスタメンを外れていた本多だった。延長11回裏、1死二塁のチャンスに代打で登場して鮮やかなサヨナラ打を放った男は、お立ち台の上で自身の置かれている立場を説明した。

「(スタメンに)自分が出たり、他の人が出たりするのは、ケガをした自分が悪い。今はチームが勝つことだけを考えて、前を向くしかない」

 その前日の試合では、本多に代わってスタメン出場した3年目の高田知季が攻守に活躍してお立ち台に上がっており、その高田は「スタメンを決めるのは監督やコーチだが、ポジションを取りたいという思いはある。試合に出るチャンスを与えられたら、死に物狂いでやるだけ」と言う。

 本多がスタメンを外れたのは、休みを与えることだけが理由ではない。相手投手との相性や、本多と他の選手の今の調子を見極めてのこともある。しかし、主力を休ませることで若手選手の経験値を上げ、チーム内競争をより高いレベルへと導く効果も生んでいる。

時には休ませない我慢も必要

 就任1年目ながら巧みなチームマネジメントを見せている工藤監督。勝負どころをわきまえ、コンディション面に配慮する一方で、我慢する大切さも知っている。開幕前に指名した「4番・内川」を一度も変えることなく、好不調の波のある柳田悠岐も3番で固定。球宴明けからは中村晃が極度の不振に見舞われたが、起用し続けている。柳田、中村の起用を、工藤監督は説明する。

「誰だって調子がいい時ばかりじゃない。いいバッターでも10回中7回は失敗するんだから。柳田にしても中村にしても、試合に出続けないといけない選手。試合に出ながら前に進んでいくしかない。本人たちはストレスがたまって大変だろうが、前を向いてやってほしい。柳田と中村のおかげで、チームがここ(首位)にいるんだからね」

 選手への信頼がチームをさらに強くする。7日からの千葉ロッテ戦(QVC)では、14カードぶりの負け越しを喫したが、11日からは本拠地・福岡に戻って2カード(オリックス戦、埼玉西武戦)を戦う。熱狂的な地元ファンの声援を受け、再び勢いを取り戻すことだろう。

「ファンの皆さんにはマジックが減っていくのを楽しみにしてもらっていいが、選手たちには1試合1試合を大事に戦ってほしい。僕たち(監督、コーチ)は、選手がケガしない状態を作ってあげられるように、しっかりサポートしていくだけ」と工藤監督は言う。 
 9月15日からは、雨天中止の振替試合を含めた9連戦と移動日を挟んでの7連戦が待ち受けているが、“休みの備学”に支えられた工藤ホークスに死角はない。「カード勝ち越し」という短期目標を常にクリアしていけば、優勝決定はさらに早くなるはずだ。

(文:藤浦一都/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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