男女混合デュエットでシンクロ界に新風 かつての名選手も復帰、新たな魅力も発見

田坂友暁

元代表の女子選手の復帰も話題に

テクニカルルーティンで初王者となった米国のビル・メイ(右)は、長年、男子シンクロ界をけん引してきた人物だ 【写真:ロイター/アフロ】

 テクニカルルーティンには6カ国、フリールーティンには10カ国が参加したミックスデュエット初の栄冠を手にしたのは、テクニカルルーティンでは米国、フリールーティンはロシアだった。

 米国で演技した男性は、10年前にシンクロ競技を引退し、その後はシルク・ドゥ・ソレイユに所属していた経験を持つ、先述のメイ。この歴史的な優勝にメイは「シンクロでも男性の存在が認められて、本当にうれしい。これをきっかけにもっと男子シンクロが世界に知れわたってほしいと思う」とコメントを残した。

 ミックスデュエットの話題は、何も男子選手だけではない。日本の足立がそうだったように、元代表選手として活躍していた女子選手も今大会を機に復帰。その代表的な選手が、フランスのヴィルジニー・デデューだ。03年バルセロナ大会、05年モントリオール大会、07年メルボルン大会のソロにおいて世界選手権3連覇を果たし、03年、05年には審査員全員が芸術点に10点満点をつけた、歴史にその名を刻む世界最高峰のソリストである。引退してからブランクはあったものの、その存在感は圧倒的だった。会場も大きく沸き上がり、デデューの演技に祝福の拍手を贈った。

安部「次世代につなげていくのが役割」

 今回、競技として行われたミックスデュエットだが、男性とのペアになることでエンターテインメント要素が大きくなった。女性ペアであれば不可能だった、デュエットでの高いジャンプやリフト、男性を加えたことで広がる表現力。各国それぞれの思いを男性と女性という、性別が異なるペアだからこそできる表現を使って観客を魅了した。

 前回の13年バルセロナ大会で、新しく採用されたハイダイビング(男子27メートル、女子20メートルから行う飛込競技)も、競技というよりも、エンターテインメント色が強い種目だ。見たことがない高さから、回転してひねってきれいに入水していく姿はとてもエキサイティングに感じられ、飛込競技に新しい風を吹き込んだ。

 ミックスデュエットも、男性が加わっただけで一気に演技のスピード感や迫力が増し、今までに見たことがない新しいシンクロを魅せられた。さらに、過去に引退した選手も復帰しやすい種目でもあり、今後大きく広がりを見せていくはずだ。

 日本でも8月に行われるチャレンジカップ2015に男性選手の参加が認められ、すでに数人のエントリーがあるという。安部が今大会の試合後に「僕は次世代につなげていくのが役割だと思っている。足立選手と花牟礼コーチと一緒に踏み出したミックスデュエットの第一歩を、必ず次につなげたい」と話していたとおり、男性シンクロの道が開かれつつある。安部・足立ペアが世界に残した足跡をたどる日本人男性シンクロ選手の新しい登場に期待したい。

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著者プロフィール

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かした幅広いテーマで水泳を中心に取材・執筆を行っている。

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