男女混合デュエットでシンクロ界に新風 かつての名選手も復帰、新たな魅力も発見
男女混合ペアによるミックスデュエットが初開催。日本の安部・足立組も健闘を見せた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
規定エレメンツを盛り込み、どれだけ正確な演技をこなせるかを競うテクニカルルーティンでは5位、そして芸術性と技の難易度を重視した演技そのものの評価で争うフリールーティンでは7位という結果を残し、日本シンクロ界に新しい歴史の一ページを刻み込んだ。
2人を指導した花牟礼雅美コーチは、フリールーティン終了後にこう話した。
「本当に胸がいっぱい。たった5カ月で世界の舞台に立つために練習をしてきましたが、初めてのことばかりでどうなるか分からない不安もありました。でも、第1回となる記念すべき大会で、よく泳ぎ切ってくれた2人に感謝の気持ちでいっぱいです」
世界では珍しくない男子シンクロの世界
しかし、世界では「メンズカップ」という男子シンクロの世界大会が行われており、2009年に第1回大会が開催。以後2年に1回の頻度で行われている。今回、ミックスデュエットに参加した米国のビル・メイもメンズカップに出場経験があり、安部は09年大会と11年大会の2大会連続で優勝を果たしている。こうした世界大会が行われるほど、世界では男性のシンクロナイズドスイミングは珍しくない。
日本でも安部が所属しているトゥリトネスという団体が、水中パフォーマンスショー集団としてさまざまな活動を行っており、そこで男性もシンクロを行っている。だが、競技としては発展しておらず、地方のシンクロクラブには男子部員もいるのだが、大会に参加する機会はなく、そのまま水から離れていってしまうのが現状だ。
たった5カ月で駆け上った世界への階段
花牟礼コーチ(中央)の指導の下、安部・足立組はペア結成からたった5カ月で世界の舞台に立った 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
表現力に長けていた安部だったが、シンクロ競技としての経験はなく、一つ一つの技を見ていくと、全くシンクロの基礎すらできていない状態だった。ペアを組むことが決まった足立は元日本代表のソリスト。実力の差は明らかだった。毎日長時間に及ぶトレーニングを行い、体は満身創痍(そうい)の状態。しかし、安部はくじけることなく、日本代表が決定してから5カ月後、見事世界の舞台で演技を披露できるレベルまで駆け上ったのである。
「フリールーティンの決勝が終わって、ステージを降りるときに『あ、最後なんだ』と実感しました。終わった安心感もありますが、寂しさもあります。ずっと苦しい練習ばかりでシンクロが嫌いになりかけましたけど、それ以上に楽しいこともあって、今は以前よりもずっとシンクロが好きになりました」