競泳代表がチーム力を発揮できる理由 大きかった精神的支柱としての北島の存在

田坂友暁

ずれ始めた『チーム力』の本質

世界選手権の競泳は8月2日から。日本代表はどんなチームをつくり上げるだろうか 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 そのロンドン五輪から3年。チームとして一丸となり世界に立ち向かう意識は、今の代表選手たちに浸透している。しかし、世界に誇る日本代表の『チーム力』に少しずつ変化が訪れていることが選手の言葉の端に現れている。

「チームのために頑張りました」
「チームが支えてくれたので乗り切れました」

 アテネ五輪に出場した選手たちに共通していたのは、“自分自身”が世界と戦ってメダルを取る、という意識だ。競泳は個人競技であることが前提にあり、たとえ目標を同じにする仲間であっても、自分と同じ種目の選手には強いライバル意識があり、日本を代表する選手であるという誇りを持ち合わせていた。

 強い“個”が同じ目標、同じ信念を持ち、同じ屋根の下に集まることで強い“集団”を作り出す。これこそが、競泳日本代表が掲げた『チーム力』の本質なのである。

 自分を支えてくれる仲間の存在や、周囲のサポートへの感謝の気持ちを持つことは大切だ。調子が上がらず、苦しんだ自分を助けてくれたのはチームの存在かもしれない。しかし、仲間で“助け合う”だけでは何も生まれないのが個人競技。先ほどの言葉は、決して間違っていないものの『チーム力』の本質からは、選手の感覚が少しずつずれ始めていることを表しているのではないだろうか。

個人がチームを引っ張り成長する

 自分自身が代表選手である誇りと強い意志を持ったうえで、さらに自分自身が狙った大会で最高のパフォーマンスをするから本当に強いチームとなる。自分の力を出し切って結果を残す姿がチームに刺激を与え、周りの選手たちはそれに応えていく。間違えてはいけないのは、チームが選手個人を引っ張っていくのではなく、選手個人がチームを引っ張っていくのである。これが逆になってしまったとき、チームとしての成長は止まる。

 ロシア・カザンで開催中の世界選手権の競泳日本代表は、中学生から社会人まで年齢の幅が広い。彼らがいったいどんなチームをつくり上げ、翌年に控えたリオデジャネイロ五輪にどんなチームで戦いを挑むのか。8月2日から始まる競泳の結果で、今の日本代表が持つ『チーム力』が見えてくることだろう。

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著者プロフィール

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かした幅広いテーマで水泳を中心に取材・執筆を行っている。

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