STVVに完全移籍した小野裕二の決意 歓喜の中で取り戻したサッカーの本質
登録が間に合い開幕戦からフル出場
小野は選手登録が間に合い、開幕戦からフル出場で勝利に貢献した 【Getty Images Sport】
夏の準備期間のSTVVはチャールトンを4−0で破り、ベルギーリーグ上位(昨シーズンは8位)のロケレンと1−1で引き分けるなど、練習試合で無敗だったばかりでなく、前線からのプレッシングが鋭く、好調が伝えられていた。しかし、小野にとってはクラブ・ブルージュ戦が移籍後初めての実戦である。しかし、チャールトン戦を視察し、少ない回数の練習の中でもしっかりチームメートの特徴を捉え、コミュニケーションも取っていたという。4−2−3−1のトップ下で出場した小野だったが、ぶっつけ本番の割にはストライカー、ヨハン・ボリとの連携も悪くなく、押し気味に戦うチームの中でプレーしていた。
しかし28分、カウンターからクラブ・ブルージュのストライカー、トム・デ・スッターに先制ゴールを決められると、STVVの選手の足が止まり、ミスが目立つようになる。小野もボールにあまり絡めなくなる時間が続く。31分にはクラブ・ブルージュのアブドゥレイ・ディアビーが無人のゴールにシュートを外し、STVVは命拾い。これが決まっていたら、おそらくクラブ・ブルージュが順当に勝利していただろう。後半始まってすぐの47分にも、STVVは大ピンチを迎えた。
だが、ここからSTVVが息を吹き返す。STVVの右サイドのジャンルク・ドンペと左サイドのエディミルソンが縦へ迫力をつけながらクラブ・ブルージュのゴール前へ迫り、57分にセンターバックのルベン・フェルナンデスが同点ゴールを決めると、74分にはエディミルソンの強烈なミドルシュートで2−1と逆転する。78分に殊勲のエディミルソンが退場すると、小野は左MFに入って守備とボールキープに奮闘し、タイムアップの笛をピッチの上で聞いた。
アディショナルタイムに見せた隠れたビッグプレー
「絶対にセカンドボールに行こうと思っていました。こっちの選手は大きいからボールに入っていけないけれど、俺は小さい分、ああいうところに入っていける。アディショナルタイムに入っていたからああいうプレーをしました。そういうプレーでもチームを引っ張って行ければいいかなと思います」
ただ、前線の選手としてはもう少しゴール前での迫力も欲しかったところか。中盤でのボールロストも減らしたい。
「もっともっと突き詰めていかないといけない部分がある。簡単にボールを失わないとか、もっとゴールに仕掛けてプレーするとか、以前日本でやっていたようなプレーをしたいです。こっちに来てから、スタンダールではずっとサイドでやってた。今は真ん中でやらせてもらっているから、そこに関してはやりやすさを感じています。試合を重ねていくごとに連携もチームメートとできていくと思うから、もっと自分らしさが出てくると思うし、出していきたいと思います」
STVVは開幕5戦でクラブ・ブルージュ、ヘント、ヘンクという強豪と当たることで、「スタートでつまずくのではないか」と懸念されていたが、その初戦でジャイアント・キリングを演じてみせた。
「久しぶりにサッカーが楽しかった。お客さんも楽しみに来ていただろうし、自分もここのピッチで初めてお客さんの前でやるのが楽しみだった。相手もブルージュということで、自分たちがどこまでできるのかというのもあった。ブルージュは火曜日にチャンピオンズリーグ予選があるから、メンバーを落としてきたというのもあると思うけれど、ピッチに入ったらそういうのは関係ない。自分たちがやろうとしていたことができたと思う。ただ、それに満足せずにしっかりやり続けたいと思います」
試合終了の笛とともに爆発させた小野とチームメートとサポーターの歓喜。その姿に、確かに小野がサッカーの楽しさを取り戻したのを感じた。