宮市の復帰を待つザンクト・パウリの人々 新たなスターに寄せられる大きな期待
宮市に求められていること
宮市の突破力はザンクト・パウリの新たな武器となるはずだった 【Bongarts/Getty Images】
「ここ数シーズン、攻撃力の弱さに泣いてきた」と、ザンクト・パウリのファンサイトを主宰するマイク・クリュケンマイアーは語る。「ストライカーに問題があったのは確かだけれども、ウイングの選択肢が少ないということも影響していた」と、問題点を説く。
宮市こそは、そうした仕事を成し遂げてくれると考えられていた。両足でパワフルにボールを蹴ることができ、豊かなスピードを誇るアタッカーは、開幕戦から左右両サイドで新たな選択肢となるはずだった。4−2−3−1のフォーメーションで、右サイドではダニエル・ブバッラ、左サイドではワルデマール・ソボタと先発出場を争うことになるだろう。「宮市ならば、この役割を完璧にこなしてくれるはずだ」とクリュケンマイアーは期待を寄せる。
昨季、ザンクト・パウリは危機にさらされていた。長らく下位に低迷し、何とか15位(全18チーム)でシーズンを終え、2部からの降格だけは免れた。今季は、そんなシーズンにするわけにはいかない。少しずつでもいいから、ザンクト・パウリは一歩ずつ正しい道を進んで行こうとしている。そしてまた、1部リーグという大舞台へと返り咲こうとしているのだ。たとえ、長い道のりであろうとしても。
宮市には、大きな期待が寄せられていた。それはクラブのみならずドイツのメディアも同様で、早々に「日本の宝石」「ザンクト・パウリのロケット」「リオジーニョ」、さらには「日本のメッシ」と書き立てた。「われわれの要求にピタリと合致する。それに素晴らしい青年でもある。彼のクオリティーがわれわれの攻撃力をアップしてくれると確信している」。宮市との契約に際して、スポーツディレクター(SD)のトーマス・メグレは、こう断言した。
けがからの復帰を人々は待ち続けている
ザンクト・パウリのサポーターは、宮市の復帰を待ち続けている 【Bongarts/Getty Images】
そのスピードは、大きな武器である。そう、自身を爆発させるように、ピッチに風を巻き起こす。前述のクラウセ記者は「宮市のこれまでの大きな負傷は、ハムストリングだけだった」と話していたが、何かを感じ取っていたのかもしれない。「1対1を恐れないし、ヘディングにも競り勝つ」と好意的に見ていたが、その積極性が負傷につながることもある。
ザンクト・パウリはプレシーズンのラージョ・バジェカーノ戦を4−2でものにした。だが、大きな代償を払った。宮市を負傷で失ったのだ。宮市の復帰は、おそらくシーズン後半戦になるだろう。その時、クラブがどのような状態にあるかは分からない。ラージョ戦は、苦い思いだけを残した。
残念ながら今後のスケジュールは、リハビリで埋まっている。医学療法士と手を携えての、復帰に向けてのハードワークが待っている。木曜日に発表された診断結果は、左ひざ前十字じん帯の断裂。サッカーはまた、彼に大きな試練を与えた。だが、宮市がこのコミュニティーの一員であることに変わりはない。
宮市は、ミラントーア・シュタディオンの新たなスターになると期待されている。だからこそ、長い時間がかかろうと、ひざの手術からの復帰を人々は待ち続ける。
繰り返そう。宮市にはたっぷりと時間がある。6〜8カ月をかけて、ハンブルクの街とその人々を知っていけばいい。
繰り返そう。たとえ時間がかかろうとも、正しい道を歩んでいく。再び大きな舞台に立つ日を目指して。ザンクト・パウリも、宮市も、そう決意している。
(翻訳:杉山孝)