充実したプレシーズンを過ごす吉田麻也 課題の集中力を保ち、定位置確保なるか?

中田徹

2試合連続完封勝利でゴールも記録

プレシーズンマッチでサウサンプトンは2試合連続完封勝利。吉田(左)はゴールを決めるなど上々の仕上がりを見せている 【Getty Images】

 サウサンプトンは7月23日、ロッテルダムでフェイエノールトとプレシーズンマッチを戦い、3−0で快勝した。今回、1週間に渡るオランダ合宿を張ったサウサンプトンは18日にも昨季のオランダカップ王者フローニンゲンを同じく3−0で下しており、攻守に仕上がりは上々のようだ。

 吉田麻也はこの2試合にフル出場し、チームの完封勝利に貢献したばかりでなく、フェイエノールト戦ではセットプレーからヘディングシュートを決めるなど結果を残した。2週間ほど前には食あたりを起こしたため、練習できない時期があり、今回の合宿では急ピッチでコンディションを上げていく必要があった。フェイエノールト戦後は「俺、今日ピーク。今、ピーク(笑)」と疲れがピークにあったが、随所に好プレーをみせた。

 吉田はセットプレーも含めてディルク・カイトをマークし続けた。先にボールに触らせておいてから体を入れて奪い返したり、レフェリーの見えない位置で後ろから押して、体勢を崩してから競り勝ったり、下り目のところからシュートを放つところを察してブロックしたりと、ほぼカイトを封じ切った。しかし、フェイエノールトが得た8分のセットプレーの際にはカイトも体を投げ出して吉田のマークを外して執念のヘディングシュートを放つなど、ストライカーらしい怖さも垣間見せた。吉田も、「なんだかんだ言って(カイトの)球際は強かったですよ。90分通してずっと存在感を出すというわけではないけれど、ベテランらしく要所要所で競り勝ってきて、僕のリズムを崩してきた。そこら辺はうまいと思います」と、カイトとの勝負を楽しんでいたようだった。

 吉田にとってカイトより苦戦したのは、右ウイングのビラル・バサチコグルのスピードだったか。前半は吉田がペナルティーエリア内で倒したものの、レフェリーはバサチコグルのシミュレーションをとり、後半は故意と思われるファウルでドリブル突破を遮った。

新チームで感じた課題

 得意のフィードは冴えていた。前半は吉田のロングフィードから、グラツィアーノ・ペッレがフリーで抜け出すシーンが生まれ、後半は吉田が入れたくさびのパスを起点に左サイドバックを務めるマット・ターゲットのオーバーラップを促すなど、精度が高かった。しかし、これから始まるプレミアリーグで、これだけのパスを出し続けるのは難しいと吉田は感じている。

「これから高いレベルでやっていく中で、僕からというよりは中盤からボールを出せるようになっていかないといけない。もっとシンプルに中盤へボールをつないで、テンポ良くボールを回せないと。今日は後ろで停滞する時間が長かった。(モルガン・)シュナイデルランがいなくなって、新しい選手がもうちょっとやっていかないといけない」(編注:シュナイデルランはマンチェスター・ユナイテッドに移籍)

 今季からサウサンプトンに移籍し、フェイエノールト時代にはキャプテンを務めていたヨルディ・クラーシにとって、デ・カイプ(フェイエノールト・スタディオンの愛称)での試合は古巣との凱旋試合となり、本人も非常に感傷的になっていたが、パフォーマンスそのものは前へのパスが少なく、吉田も「遠慮がちかな」と感じていた。能力は高いMFなので、サウサンプトンやプレミアリーグそのものに慣れていけば、前へテンポの良いパスをつなげていけるはずだ。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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