なでしこリーガーそれぞれの再出発 ファンが解決できる女子サッカーの課題

馬見新拓郎

女子W杯から2週間が過ぎて

リーグ再開後の第10節では出場停止の岩清水に代わってキャプテンマークを巻いた有吉(緑)。女子W杯を経験して存在感がさらに際立つようになった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 なでしこジャパンの準優勝によって、大きな注目を集めた女子ワールドカップ(W杯)カナダから2週間が過ぎた。

 日本時間7月6日の米国女子代表との決勝戦後、カナダから帰国した23人のうち、海外組は束の間のオフを過ごしている。だが、プレナスなでしこリーグ所属の国内組17人は休む間もない。帰国した5日後には、女子W杯によって中断していたプレナスなでしこリーグ1部のレギュラーシリーズが再開した。

 けがを抱えている選手を除いたほとんどの選手は、疲労を考慮した休養という選択はせず、リーグ再開後から各チームの主力として出場を続けており、特に代表選手を抱えるチームの試合は、入場者数が増加傾向にある。

 リーグが再開してから第10節から第12節分を消化したが、女子W杯で活躍した選手のプレーを一目見ようと、年齢幅の広い家族連れや、サッカーを習っている女の子を中心に、リーグ中断前以上にスタンドがにぎわうようになった。また、それに呼応するように、1部リーグの10チームはこれまで以上の熱気を持って全国各地でしのぎを削っている。

 佐々木則夫監督を中心としたなでしこジャパンのコーチ陣も、精力的に各地のなでしこリーグの視察を重ね、8月1日に初戦を迎えるEAFF女子東アジアカップ決勝大会に向け、すでに再始動した。

ピッチ内外で変化を感じる有吉

リーグ再開後の3試合で有吉は自信に満ちあふれたプレーを披露した 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 DF岩清水梓、MF阪口夢穂、DF有吉佐織の3人が所属する日テレ・ベレーザは、再開後初の第10節で勝利し、INAC神戸レオネッサをかわして、一時首位に立つなど優勝争いを激化させている。

 中でも、初めての女子W杯で大会最優秀選手候補にまで入った有吉は、日テレを牽引する一人として、さらに存在感が際立っている。有吉はなでしこジャパンでは右サイドバック(SB)を任されたが、日テレでは左SBが定位置だ。第10節・ASエルフェン埼玉戦(1−0)では、累積警告によって出場停止の岩清水に代わって、人生で初めてキャプテンマークを左腕に巻いて試合に出場した。

「日テレの選手としても、質の高いプレーを続けていくことは変わらない」と平常心で臨んだ試合では、左SBから日テレ自慢の細かく速いパスサッカーを主導。有吉がプレーに絡む度に、観客席の声援もさらに大きくなった。

 なでしこジャパンの中で今大会最も評価を高めた選手の一人である有吉は、なでしこリーグ再開後の3試合で、自信に満ちあふれたプレーが印象的。代表選出から定着までに時間はかかったが、攻撃的な自らのスタイルを強気に発揮できるようになった。

 フットサル場の受付という、日々の通常業務をこなす生活スタイルは変わらないが、周囲からの目は大きく変わったと、有吉は話す。

「サッカーファンの方には、職場で声をかけてもらうことがあったが、今は街中でもサラリーマンの方に声をかけられることが多くなった。『どこに住んでるの?』とか、なかなかお答えできないことも聞かれる(笑)」と、ピッチ外の有吉自身はいつも笑顔。その点も女子W杯前と何ら変わりはないが、「結果を出し続けることって、やっぱり大事なんだなと思った」と、1部リーグで唯一無敗を守る日テレの主力の一員としても、結果の重要性を痛感している様子だった。

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著者プロフィール

1984年2月8日、鹿児島県阿久根市出身。フリーライター。携帯電話公式サッカーサイト『オーレ!ニッポン』編集部を経て、2005年からフリーに。以後、女子サッカーを中心に2011年女子W杯、ロンドン五輪などを取材。週刊サッカーマガジン、エルゴラッソ等に寄稿。既刊本に『なでしこジャパン 壁をこえる奇跡の言葉128』(二見書房)。

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