岩隈久志が誇示した支配力 今後の投球がMLBでの未来を左右する
重要な意味を持つ後半戦の出来
トレードの可能性など周囲が騒がしくなり始めている岩隈。MLBでの契約を考えると、後半戦の登板には勝ち負けのほかにも重要な意味が出てくる 【Getty Images】
2011年オフに不当と思えるほど安い1年150万ドル(当時のレートで約1億2千万円)の契約でマリナーズに入団し、その翌年に2年1400万ドル(同約11億2000万円、3年目は700万ドル=約5億6000万円=の球団オプション)という安価で再契約。メジャー入り以降は“バーゲン”と呼んで良い条件で投げ続けた34歳は、オフに晴れて再びFA権を得る。
この岩隈の市場価値を推し量る目的で、約1年前、“現時点でFAマーケットに出たら”という問いを、『スポーツ・イラストレイテッド』誌のベン・ライター記者にぶつけたことがあった。このライター氏とは、毎年オフに「ライター・50」と銘打った特集記事を発表し、50人のFA選手の値段、行き先の展望を展開するFA予想の専門家である。
「比較対象として適切なのは、11年に33歳だったマーク・バーリー(現ブルージェイズ)がマーリンズから受け取った4年5800万ドル(約71億6000万円)。FAになる前年のバーリーは岩隈ほどハイレベルには投げていなかったが、耐久力では上回っている。岩隈は4年6000万ドル(約74億円)くらいの契約に落ち着くのではないか。近年はメジャーの各チームは高齢の投手に長期契約を提示するのを特に敬遠する傾向にあるだけに、4年以上の年数にはならないはずだ」
ライター氏がそこで示唆していた通り、岩隈の耐久力への不安が今季は的中してしまった感がある。大型契約に向けて力を見せたいシーズンで、前半戦をほとんど棒に振ったのは最悪に近いタイミングだった。さらに1つ歳を重ねたことを考えても、今オフには“4年6000万ドル”という昨年の予想をかなり下回る条件が提示されることになるだろう。
ただ、たとえそうだとしても、これから先に過去2戦同様のテンポの良い投球を続けたらどうなるだろう? ア・リーグの一部の強力打線を相手に、試合をつくり、時に“マシーン”のような支配的な力を見せられたら? それでも4年契約はもう難しいが、少なからず市場価値を回復させることは可能に違いない。
「後半戦の1発目を勝ててスタートできたことはすごく大きい。これからも自分のピッチングができるように練習していきたいと思います」
ヤンキース戦後には本人はこともなげにそう語ったが、実際にこれから先の数試合、そして後半戦すべての登板機会は、岩隈にとって重要な意味を持つ。
次の先発予定は、7月23日(日本時間24日)のタイガース戦。主砲ミゲル・カブレラを欠いているとはいえ、得点力ではブルージェイズ、ヤンキースに次ぐア・リーグ3位の強力打線である。6日の復帰戦で4本塁打を許したこの相手にも、岩隈が奇麗にリベンジできれば……その先に、さらに興味深い未来がうっすらと見えてくるはずである。