ジョコビッチ、結婚が最大の勝因? 柔軟な思考能力でウィンブルドン3度目V

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決勝は40回目の“巨人対決”

ウィンブルドンの男子シングルスは、ジョコビッチが2年連続3度目の優勝を飾った 【写真:ロイター/アフロ】

 テニスのウィンブルドン最終日は12日、男子シングルス決勝などが行われ、第1シードのノバック・ジョコビッチ(セルビア)が昨年に続きロジャー・フェデラー(スイス)の挑戦を退け、2年連続3度目の優勝を飾った。ジョコビッチのグランドスラム優勝は今年の全豪オープンに次いで通算9回目。優勝賞金は188万ポンド(約3億5800万円)だった。

世界ランキング1位と2位の対決は世界から注目を集めた 【写真:ロイター/アフロ】

 世界ランキング1位と2位による最終日の激突――世界のテニスファンは、まさに天下分け目の大勝負を堪能しただろう。2人の“巨人対決”は40回目で、ここまでフェデラーの20勝19敗。グランドスラムでは12度対戦し6勝6敗と互角だが、ツアーの決勝対決は15度目で、こちらは直近のローマ大会を含めジョコビッチが9勝している。

 今大会のフェデラーは全盛期を思わせる好調さ。特に準決勝で地元イギリスのアンディ・マレーをストレートで退けてきただけに、3年ぶりの優勝への期待が膨らんでいた。

違うレベルに到達しているフェデラー

 ウィンブルドンはフェデラーびいきだ。7度の優勝という芝のヒーローである以上に、ネットプレーを中心にした攻撃的なプレースタイルがセンターコートに映えるからだろう、大きな声援を背に軽やかにスタートを切った。今大会は特に好調なサーブから、かつてのプレースタイルだったサーブ&ボレーを頻繁に仕掛け、さらにはリターンからもネット攻撃をうかがってくる。フェデラーは第1セットの第1、第5ゲームをラブゲームでサービスキープ。そのリズムに乗って第6ゲーム、強烈なフォアハンドや軽い身のこなしのパッシングショットで先にブレークに成功した。

 ここまで両者とも6試合の内、5試合をストレートで勝ち上がった。ジョコビッチの総所要時間13時間4分に対し、フェデラーは9時間58分。ここに2人のプレースタイルの違いを見ることができるだろう。速いテンポで試合展開を進めていくフェデラーに対し、ジョコビッチは5セットの長丁場も視野に入れながらじっくり戦略をめぐらせる。

 その駆け引きを考えた時、ブレークした直後の第7ゲームの攻防が鍵だった。フェデラーは時速198キロのサービスウィナーで2ポイントを奪ったが、プレッシャーがかかったのだろう、ファーストサーブが入ったのはその2本だけ。ジョコビッチにセカンドサーブをベースライン深くに返されて、すぐブレークバックを許した。さらに悔やまれたのはゲームカウント6−5からの第12ゲーム。ダブルフォルトをもらって2本のセットポイントを握ったものの、攻め切れなかった。こうした雰囲気でのタイブレークは水ものになる。押され気味だったジョコビッチがこれを7−1で奪って先行した。

 短期決戦を狙い、チャンスがありながらセットを落とした……フェデラーの落ち込みは想像できたが、間もなく34歳になるテニス界のトップランナーはまた違うレベルに到達しているようだ。特に、第2セット第5ゲームの手に汗握る熱戦に客席は息をのみ、歓声が何度も飛び交った。ジョコビッチのサービスゲーム、最初のデュースでフォアハンドのウィナーをクロスに決めたフェデラーにブレークポイントを握られる。ジョコビッチがここぞとばかりに時速198キロのファーストサーブをたたきこんで打ち合いを制すと、フェデラーはさらに攻め上げてフォアハンドのウィナーを決めるというシーソーゲーム。結局はジョコビッチがサービスキープするが、この攻防はテニス界の二つの激流の交差を思わせる迫力だ。

 第2セットもタイブレークになだれ込んだが、フェデラーが執念を見せ12−10で奪った。

ギリギリのところで負けないジョコビッチ

第2セットを落とすも、流れはジョコビッチにあった 【写真:ロイター/アフロ】

 セットカウントはいずれもタイブレークによる1−1のタイ。しかし、流れはジョコビッチだった。ジョコビッチは今シーズンに入って絶好調を維持していたが、全仏オープンの決勝でスタン・ワウリンカ(スイス)に敗れた。今季の最大の目標はまだ一度も取っていない全仏のタイトルであり、延長線としてフェデラーもラファエル・ナダル(スペイン)もやっていない年間グランドスラムがあったはずだ。しかし、その大目標への道が途切れ、今大会では気持ちの落ち込みをどう克服してくるのかが注目された。それを知る上で、決勝までの6試合に許したブレークポイントの数が興味深い。フェデラーの4本と比べて25本と異常に多いが、その内の20本をセーブした。押されながらも、ギリギリのところでは負けてこなかったのが今回のジョコビッチだ。

 2セットが終わったところで試合時間は1時間50分。ペースはジョコビッチのもので、続く2セットを6−4、6−3で切り抜けて栄冠を手にした。結局、フェデラーはブレークポイント7本をつかみながら第1セットの1本しかブレークはできなかった。

「クレーコートの全仏オープンに続いて、すぐに芝のウィンブルドンという大きな目標があるのは良いことだと思えるようになった。すぐ気持ちを切り替えなければいけない。メソメソしていられない。去年はパリでナダルに負けてからここでフェデラーに勝ち、今年もワウリンカに負けてフェデラーと対戦することになった。もしウィンブルドンという大きな目標がなければ、切り替えは簡単じゃないと思う」

 こうした柔軟な思考能力が、ジョコビッチというチャンピオンの特徴だろう。家族席に何度も黄金のトロフィーをかざした。ウィンブルドンを知り尽くしたコーチのボリス・ベッカーの知恵も大きかった。

 ちょうど1年前に結婚し、父親にもなっているジョコビッチ。会見ではこんなことも言った。

「結婚してからあまり負けなくなったし、何度も優勝している。選手のみんなに言いたいのは、『結婚しなさい。そしてたくさん子どもをつくって、テニス人生を楽しもう』」

 最大の勝因はそこだったかもしれない。

(文:武田薫)

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