中田浩・柳沢・新井場が歩む新たな道 スターたちが彩った華やかな合同引退試合
多くの関係者が花を添える
中田浩(前列左から2人目)、柳沢(前列右)、新井場(前列左)の引退試合に三浦知(右から2人目)らそうそうたる面々が一堂に会した 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
試合の方は、鹿島にゆかりのある選手たちで構成される「ANTLERS LEGENDS」と、3人が日本代表や他クラブなどで関わった選手で構成される「KAY FRIENDS」が90分勝負に挑む形を取った。過去の引退試合では主役が両チームに入ってプレーするのが恒例だったが、今回は「鹿島の選手として最後まで戦いたい」という3人の希望から前者のみに参戦した。
先発メンバーは、「ANTLERS LEGENDS」がGK佐藤洋平、DF(右から)名良橋、秋田、奥野僚右、新井場、ボランチ・本田泰人、中田、右MF鬼木達、左MF増田忠俊、FW柳沢、平瀬の4−4−2。対する「KAY FRIENDS」はGK武田博行、DF(右から)田中誠、鈴木秀人、木場昌雄、右アウトサイド山田暢久、左アウトサイド波戸康弘、MF戸田和幸、名波、三浦淳寛、FW三浦知・中山という3−5−2。現役の中村俊輔や小野伸二はベンチスタートとなった。キャプテンマークはそれぞれ柳沢と三浦知がつけた。
柳沢が先制弾、新井場もドリブルで魅せる
ゴールラッシュの口火を切ったのは柳沢(赤)。先制点をマークし、相手からも祝福される 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
だが、対戦相手も負けていない。30分には三浦知が華麗な直接FK弾でスタジアムを沸かせる。「俊輔も伸二もいないうちに蹴っておこう」とリラックスして振りぬいた一撃がネットに突き刺さり、本人も苦笑い。柳沢に「決めちゃってごめんね」と土下座するパフォーマンスも見せた。「カズさんはお祭り男というか、こういう時には必ず決めてくる」と新井場も感心するばかりだった。
鹿島の2点目は前半39分にその新井場が挙げる。スタンドから「点を取ってくれ」を繰り返し煽られた男は、約80メートルの弾丸ドリブルで6人抜きから右足を一閃。スタンドの大歓声に応えた。彼は中田、小野、稲本潤一らと同じ79年生まれの黄金世代でありながら、日本代表歴はフィリップ・トルシエ時代の候補止まり。鹿島には9年間在籍し、力強くチームを支えたが、他2人に比べるとキャリア的には地味な印象があった。けれどもこの日は、持ち前の明るさと関西ノリで完全に主役として君臨していた。「こうやって自分が引退試合に呼んでもらえたことだけで幸せ。高校3年だった97年7月5日の浦和レッズ戦でプロデビューを飾り、15年7月5日に引退試合をするというのは運命的なものを感じる」と感慨深げにコメントしていた。
中田もゴールを決めて満面の笑み
PKを決めて中田もゴール。仲間たちから胴上げされ、満面の笑みを浮かべた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
スタンドからも叱咤(しった)激励の意味を込めたブーイングが何度か起きた後半39分、柳沢が半ば強引にペナルティーエリア内で倒れこみ、PKをゲットする。主審もバニシングスプレーで「KOJI」と書いて、中田のゴールを熱望した。ここまで舞台が整ったら、もう決めるしかない。背番号6をつけた男は左足を振りぬき、ようやくゴール。仲間たちから胴上げされ、満面の笑みを浮かべていた。「いろんな邪魔が入って点を取るのに時間がかかったけれど、90分間フル出場できてよかった」と本人も冗談交じりに安堵(あんど)感を吐露していた。最終的にはマルキーニョスも1点を追加し、鹿島側が5−2で圧勝。3人の引退を華々しく飾った。