状況が一変したヘルタ・ベルリンでの苦悩 細貝萌が語る成長と葛藤の1年<前編>
ヘルタ・ベルリンで厳しいシーズンを過ごした細貝に、この1年を振り返ってもらった 【スポーツナビ】
一方で、ヘルタ・ベルリンに移籍して2季目を戦った細貝萌にとっては、不本意なものとなった。序盤はボランチのレギュラーとして出場を続けたものの、成績不振によりヨス・ルフカイ監督が解任されると出場機会が激減。パル・ダルダイ監督が就任してからはベンチ外が続き、4月には人生初となる入院を余儀なくされた。
シーズン後半は特につらい時期を過ごした細貝だったが、「人としては間違いなく強くなったと思うし、成長できた」と振り返る。その過程には何があったのか、本人に語ってもらった。
きれいにやろうとし過ぎていた
がむしゃらにやっていた昨シーズンに比べ、今シーズンはきれいにやろうとし過ぎていたという細貝 【Bongarts/Getty Images】
すごく難しいシーズンだったと思っています。昨シーズンはコンスタントに試合に出場できて、昇格1年目のチームでの11位という結果も良かったです。それに比べて今季は前半戦こそ試合に出ていたものの、チームとして結果を残せずにいた。後半戦は監督が変わったことで自分の立場も一気に変わってしまいました。
試合に出られない時期があんなに続いたのはドイツに来てからもなかったですし、さらにメンバー外になったことは良い選手に囲まれていたレバークーゼン時代にもなかったことです。その時はすごく厳しかったですね。
――昨シーズンから具体的に何が変わったのでしょうか?
チームの勢いがなかったと思います。昨シーズンはチームが2部から1部に上がってきて、恐れずに立ち向かっていくではないけれど、がむしゃらにやっていました。1部に残留したことによって、もっとうまくやろうとする選手が増えたと思います。きれいにやろうとし過ぎて、最後にやられてしまう試合が多かったです。
――ルフカイ前監督には細貝選手がアウクスブルク在籍時から師事していました。監督に対する思いは?
自分をすごく評価してくれていた監督です。ドイツ語では数字も1から10まで言えない頃から知ってくれています。監督がいたから自分はヘルタに行くことができたと思うので、すごく感謝しています。
監督交代後に状況が一変
ルフカイ前監督(左)の解任後、ベンチ外になるなど細貝の状況は一変した 【Bongarts/Getty Images】
監督が交代した直後はベンチに入っていました。その後はベンチ外になって、それから足の炎症で練習ができない状況になりました。
メンバーから外れた理由は、監督やスポーツディレクターとも話をしました。本来の、昨シーズンのプレーを取り戻してもらうために外していると言われました。自分がこのチームで1番のボランチだと言われていたものの、ベンチ外が続いた。それは選手として難しいところがありました。
監督交代で、状況はまったく変わりましたよね。スタメンで出ていた選手がベンチになるとか、ベンチに入っていた選手がベンチ外になることはあると思います。でもスタメンで出ていた選手がベンチ外というのはなかなかない。でもチームは一番出場していた僕をベンチ外にすることで、何かを変えようとした。やっぱり出られなかったことは悔しかったです。それでも、使ってもらえなかったのは監督に対してどうこうではなく、自分の実力不足だと思っています。
――チームメートからは何か声をかけられましたか?
練習では「なんで試合のメンバーに入らないの?」と聞かれたし、ある選手には「出場停止か?」と言われたこともありました。ブンデスリーガの最終節(ホッフェンハイム戦)だけメンバーに入って、そのときはチームメートから拍手されました。初めてメンバーに入った選手みたいというか、「やっと入ったか」みたいな。
練習をしっかりやっていることを選手は見てくれていたと思うし、伝わっていたのかなと思いました。いろんな人が話しかけてくれるし、自分の意見を聞いてくれる。そういう選手がたくさんいた。選手は評価してくれていることを感じたので、すごくうれしかったです。
でも人としてなのか、選手としてなのか、両方なのかは分からないですけれど、使われないのは実力不足だと思うんです。監督に文句があるわけではないし、逆にこうなったことで人として成長できたと思っています。強がっているのではなくて、そのときはそう思えなかったけれど、今になってみれば良い経験をしたと思っています。