鈴木彩香と山口真理恵、それぞれの戦い 女子ラグビーを引っ張ってきた2人の今
五輪に向けて会社を辞め、ラグビーに専念
山口真理恵はラグビーに専念し、五輪出場を目指す 【斉藤健仁】
「仕事とラグビーを両立しないといけない」と、どこか気を張っていた姿はもうない。「ビジネスモードというか、大人ぶっていたのはちょっとわかる気がします(苦笑)。少しフレンドリーになりましたね」と笑顔を見せる山口は、まるで高校時代のような自然体かつチャレンジングな気持ちで競技に打ち込んでいる。
大ケガにも気持ちは折れなかった鈴木
大ケガからの復活を期す鈴木彩香 【斉藤健仁】
ただ2014年からは立正大の職員となり、立正大がバックアップする「アルカスクイーン熊谷」で小学生を中心にコーチも始めた。そして迎えた2015年1月、セブンズの強化合宿には、久しぶりに山口だけでなく鈴木の名前があった。再び、ともに日本代表に向けて調子を上げていくと思われた矢先、その合宿の終盤。鈴木は左膝の前十字靱帯を断裂の大ケガを負ってしまう。好事魔多し、だ。「久しぶりの日本代表の合宿で疲労もたまっていたのかもしれません。無理しないと復帰にアピールできないなと思っていたので……」(鈴木)
だが、鈴木の気持ちは折れなかった。「ケガをしても後ろ向きになったことは一度もなくて、そういう運命だったと受け入れています。私は45歳くらいまで、できる限り好きなラグビーをやりたい。その尺度で考えたら、たいしたことではないかなって……」。手術後、すぐにリハビリを始めた鈴木は、すでに走ることができる状態まで回復している。
「今年の目標はオリンピック予選を戦う12名のメンバーに入ること。子どもたちの夢を閉ざさないためにも、オリンピックには出ないといけない。若い選手たちにどうフィットするかはわかりませんが、体が動けば戦える自信はある」(鈴木)
リオ五輪で大きな花を咲かせるために
「ラグビーに生かされている」と感謝の気持ちを忘れずにいる鈴木彩香 【斉藤健仁】
そして7月からのセブンズの強化合宿のメンバーに、山口とともに鈴木の名前もあった。
大学時代はラグビーに一生懸命過ぎて「つんつんしていた。怖かったと言われます(苦笑)」という鈴木。今では「ラグビーに生かされている」と感謝の気持ちを忘れず、真摯(しんし)にリハビリに励んだ成果である。
現在の女子ラグビー界を見れば、経験豊かな2人は「ベテラン」と言っても差し支えないだろう。もちろんまだ、競争の中にあるが、若手選手が伸びてきた一方で、大舞台で戦うことを考えれば、浅見HCは2人の経験を買っていることは明らかである。
小学校時代、ともにタグラグビーで楕円球を追い始めた幼なじみは、今、立派なアスリートとして心身ともに充実した時期を迎えている。来年、リオデジャネイロで大きな花を咲かせるためにも、まずはともに日本代表に選出され、アジア予選突破に全精力を注ぎたい。